欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


ヒトおよび動物由来のサルモネラおよびカンピロバクターは一般的な抗菌剤に対し高い耐性率を示す
Salmonella and Campylobacter show significant levels of resistance to common antimicrobials in humans and animals
26 February 2015
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/150226.htm

(食品安全情報2015年9号(2015/04/28)収載)


 最も一般的な食品由来感染症の中には、分離株が依然として抗菌剤耐性を示すことから明らかなように、その治療法の選択肢が減少しているものがある。例えば、多剤耐性のサルモネラ株が依然として欧州全域に蔓延している。また、ヒトおよび動物由来のカンピロバクター株でも、高いシプロフロキサシン耐性率が欧州連合(EU)加盟数カ国から報告されている。しかし、極めて重要な複数の抗菌剤への共耐性率は両菌とも依然として低い。以上が、欧州食品安全機関(EFSA)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)が共同で発行した報告書「EU域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する2013年次要約報告書(European Union Summary Report on antimicrobial resistance (AMR) in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food)」に収載されている結果の一部である。

 今回EFSAおよびECDCは、データの解釈に初めて同様の基準を用いた。EFSAのリスク評価・科学支援部門(Risk Assessment and Scientific Assistance Department)によると、ヒト、動物および食品における抗菌剤耐性のデータはさらに比較しやすくなり、抗菌剤耐性への対策が一歩前進した。

 またECDCの専門家は以下のように述べている。ヒトのカンピロバクター感染の大部分がブロイラー肉の不適切な取扱い・調理・喫食によるものであることを考慮すると、ヒトおよびブロイラー由来のカンピロバクター株でフルオロキノロン系抗菌剤への高い耐性率が認められたことは懸念すべき問題である。このような高レベルの耐性により、重症のヒトカンピロバクター感染症に対する有効な治療法の選択肢が少なくなる。


本報告書に示された重要な結果

  • ヒト、動物(特にブロイラー、七面鳥)および動物由来食肉製品から分離されたサルモネラにおいて、一般的に使用される抗菌剤への耐性が頻繁に検出された。サルモネラ分離株の多剤耐性率は高く(ヒト由来:31.8%、ブロイラー由来:56.0%、七面鳥由来:73.0%、肥育ブタ由来:37.9%)、また、特定の多剤耐性株がヒトおよび動物(ブロイラー、ブタ、ウシ)に持続的に蔓延していることは懸念すべき問題である。

  • ヒトおよび動物(特にブロイラー、ブタ、ウシ)由来のカンピロバクター株で、一般的に使用される抗菌剤への耐性が頻繁に検出された。食品ではブロイラー肉由来の株で耐性が検出された。極めて重要な抗菌剤であるシプロフロキサシンへの耐性レベルは特にヒト由来株で高く、これは重篤なカンピロバクター感染症の治療法の選択肢が減少していることを意味している。Campylobacter jejuniでは、ヒトおよびブロイラー由来分離株のそれぞれ半数以上(54.6%および54.5%)、またウシ由来株の35.8%でシプロフロキサシン耐性が確認された。またC. coliでは、ヒトおよびブロイラー由来分離株のそれぞれ3分の2(66.6%および68.8%)、およびブタ由来株の31.1%でシプロフロキサシン耐性が確認された。

  • サルモネラ分離株では、複数の極めて重要な抗菌剤への共耐性率は低レベルであった(ヒト由来株:0.2%、ブロイラー由来株:0.3%、肥育ブタ由来株:0%、七面鳥由来株:0%)。カンピロバクター分離株の複数の極めて重要な抗菌剤への共耐性率は、動物由来株では低から中レベル(C. jejuniの場合はブロイラーおよびウシ由来株がそれぞれ0.5%および1.1%、C. coliの場合はブロイラーおよび肥育ブタ由来株がそれぞれ12.3%および19.5%)で、ヒト由来株では低レベル(C. jejuniは1.7%、C. coliは4.1%)であった。
 本報告書には、動物および食品由来の指標大腸菌、指標腸球菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の抗菌剤耐性データも収載されている。


追加参考情報:

  • EFSAとECDCは協力し、ヒト、動物および食品由来の分離株における抗菌剤耐性をモニターしている。このことが、抗菌剤耐性がどのように生じ、蔓延していくかを理解するのに極めて重要である。
  • 抗菌剤耐性とは、細菌が以前は感受性であった抗菌剤に耐性になることである。
  • 細菌が3種類以上の異なるクラスの抗菌剤に耐性の場合、これを多剤耐性(multidrug-resistant)という。また本報告書では、共耐性(co-resistance)とは、極めて重要な特定の2剤の抗菌剤への耐性のことである。
  • 前年次までの報告書では、微生物学的耐性レベル(動物および食品由来分離株の耐性の報告に使用)の算定と臨床的耐性レベル(ヒト由来分離株の耐性の報告に使用)の算定とに異なる判定基準が用いられていた。微生物学的耐性判定のための基準の方が臨床的耐性判定のための基準に比べ感度が高く、より低い濃度での増殖でも耐性と判定される。今年次の報告書では、微生物学的耐性判定のための基準が動物由来株とヒト由来株の両方に使用されている。したがって、ヒト由来分離株について報告される微生物学的耐性のレベルは、昨年次までの報告と比べて高くなっている場合が多い。

(EFSA/ECDC報告書)

欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2013年)
EU Summary Report on antimicrobial resistance in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food in 2013
EFSA Journal 2015;13(2):4036
26 February 2015
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/doc/4036.pdf (報告書全文PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4036.htm



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部