欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


生乳(未殺菌乳)の喫飲のリスク
Raw drinking milk: what are the risks?
13 January 2015
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/150113.htm

(食品安全情報2015年2号(2015/01/21)収載)


 生乳(未殺菌乳)には重大な疾患の原因となり得る有害な細菌が含まれている可能性がある。生乳の細菌汚染の可能性を低減するためには農場での最新の適正衛生規範(GHP)の実施が不可欠であり、また、生乳中の細菌の増殖を阻止または抑制するためには低温流通システム(cold chain)の維持管理が重要である。しかし、これらの対策だけでは上記のリスクを完全に排除することはできない。多くの病原菌を死滅させるためには、生乳を喫飲前に煮沸することが最も効果的である。

 生乳の健康効果を信じる人は多く、欧州連合(EU)域内では生乳の喫飲に関心を持つ消費者が増えている。EUの衛生規則にもとづき、加盟各国はヒトの飲用の生乳の販売を禁止または制限することができる。いくつかの加盟国では飲用の生乳の自動販売機による販売が認められているが、消費者は喫飲前に乳を煮沸するよう指導されていることが多い。

 欧州食品安全機関(EFSA)の生物学的ハザードに関する科学パネル(BIOHAZ パネル)の専門家は、「EU域内の生乳に関連した公衆衛生リスクに関する科学的意見」(下記参照)において、生乳はカンピロバクター、サルモネラ、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)などの有害な細菌の感染源となり得ると結論付けている。

 データ不足により、EU域内での生乳の喫飲に関連した公衆衛生リスクの定量化はできなかった。しかし、食品由来疾患アウトブレイクに関するEU加盟国のデータによると、生乳の喫飲による疾患アウトブレイクが2007〜2013年に計27件発生している(表)。


 表:原因食品として飲用の生乳との関連が強く示唆された食品由来疾患アウトブレイク(EU加盟国からEFSAへの報告データ、2007〜2012年)【EFSA報告書Table 3より】


 27件のアウトブレイクのうち21件はカンピロバクター、1件はサルモネラ、2件はSTEC、3件はダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)が原因であった。これらのアウトブレイクの大多数はウシの生乳によるもので、少数はヤギの生乳によるものであった。

 乳幼児、小児、妊婦、高齢者および免疫機能が低下している者では、生乳の喫飲によって罹患するリスクが高い。


(参考)

 生乳(未殺菌乳)とは、ウシ、ヤギ、ヒツジ、およびその他の動物由来で、40°Cを超える温度での加熱、またはそれと同等の効果のある処理を施していない乳である。


(EFSA報告書)

飲用の生乳の喫飲に関連した公衆衛生リスクに関する科学的意見
Scientific Opinion on the public health risks related to the consumption of raw drinking milk
EFSA Journal 2015;13(1):3940
Published: 13 January 2015
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/doc/3940.pdf (報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3940.htm


(食品安全情報(微生物)本号 FSAI記事参照)



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部