(食品安全情報2015年23号(2015/11/11)収載)
分子タイピング法だけでなく種々のタイピング法は一般的に、公衆衛生のため長年にわたり食品・水由来疾患(FWD)サーベイランスに利用されてきた。全ゲノムシークエンシング法(WGS)や培養に依存しない検査法など、微生物を検出・特定する新しい技術の出現は、食品由来感染症の診断やタイピングの方法に根本的な変化をもたらしている。
公衆衛生微生物学へのWGSの導入に関連したニーズに応え、食品・水由来疾患のためのEU/EEA規模での分子タイピング強化サーベイランスのさらなる発展を加速させるため、専門家グループ(FWD-NEXT Expert Group)が結成された。このグループは10カ国の微生物学者、疫学者およびバイオインフォマティクス専門家から構成され、食品・水由来疾患サーベイランスへの次世代タイピング法の導入に取り組んできた。
本報告書はこのグループにより作成されたもので、サルモネラ、リステリア(Listeria monocytogenes)、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)およびカンピロバクターの4種類の病原体に焦点が当てられている。報告書は加盟国の視点から記述され、検体の準備、シークエンシングからデータ分析、さらには異なる機関の間でのデータ共有や共同作業までの全過程をカバーしている。
したがって、本報告書は主に、各国の公衆衛生リファレンス検査機関、国レベルの機関に所属する疫学者、およびそれらの直接の利害関係者を対象としている。また本報告書は部分的に、日常的にWGS分析を実施することになる機関のIT部門にも、特にデータ保存やコンピュータ処理能力に関する計画立案の面で適切なものとなるであろう。