欧州疾病予防管理センター(ECDC)からのカンピロバクター関連情報
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欧州疾病予防管理センター(ECDC)の2014年次報告書
Annual Report of the Director 2014
10 June 2015
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/annual-director-report-2014.pdf (報告書全文PDF)
http://ecdc.europa.eu/en/publications/_layouts/forms/Publication_DispForm.aspx?List=4f55ad51-4aed-4d32-b960-af70113dbb90&ID=1315

(食品安全情報2015年15号(2015/07/22)収載)


 欧州疾病予防管理センター(ECDC)が発表した2014年次報告書から、食品・水由来疾患および人獣共通感染症に関連した成果に関する部分を抜粋して以下に紹介する。


食品・水由来疾患および人獣共通感染症に関する2014年の施策の成果

  • 3種類の食品・水由来疾患(FWD)病原菌(リステリア、サルモネラ、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC))をカバーする大規模な分子サーベイランス試験プロジェクトについては、ECDC諮問フォーラム(Advisory Forum)により成功であったと評価された。加盟各国がこれらの病原菌の分子タイピングデータを共有することは、今や、これらの病原菌の欧州連合(EU)レベルでの通常サーベイランスの一部となっている。これにより、EUレベルのサーベイランスシステムに重要な価値が付加されることが明らかになった。すなわち、パイロット試験期間中およびその後に、分子タイピングデータにもとづくEUレベルサーベイランスを通じ、複数国にわたるアウトブレイク発生のシグナルが複数回検出された。これらのシグナルはその他のアウトブレイク検出システムでは全く検出されなかった。2014年末までに20カ国以上の加盟国が欧州サーベイランスシステム(TESSy)を介した分子タイピングデータの共有を実施している。ECDCは、今後数年をかけて分子サーベイランスの対象に複数の新たな病原体を追加することを目指しており、また、全ゲノムシークエンシングとサーベイランスとの統合を徐々に進めていく。

  • 公衆衛生分野での分子サーベイランスの拡大と並行して、ECDCは欧州食品安全機関(EFSA)およびEUのリファレンス検査機関の食品および獣医学分野の担当者たちと協力し、フードチェーンの各段階で分離された株の分子タイピングデータについて、それらの間の比較可能性の向上を目指している。2014年、ECDCおよびEFSAは、食品、飼料、動物およびヒト由来のリステリア、サルモネラおよびVTEC株に関して共同の分子タイピングデータベースを実現するため、これを監督する運営委員会を設立した。2010年以降、ECDCはEFSAおよびフランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)と協力し、食品およびヒト由来のリステリア分離株でPFGE(パルスフィールドゲル電気泳動)検査を実施している。2014年には、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)一部の食品のベースライン調査により得られたリステリア分離株、およびヒト患者から2010〜2011年に収集されたリステリア分離株について、それらの分子サーベイランスデータセットの結合のための技術的作業が完了した。この共同プロジェクトの成果を用いた疫学的分析の結果が2015年のECDC諮問フォーラムで発表される予定である。

  • ECDCは、2014年もサルモネラ、VTECおよびリステリアを対象とした公衆衛生微生物学分野の能力強化を図るため、外部精度評価(EQA)プログラムを介したEU/EEA(欧州経済領域)加盟各国に対する支援を継続した。ECDCはまた、サルモネラおよびカンピロバクターの抗菌剤感受性試験に関するEQAプログラムも開始した。

  • 前年までと同様、ECDCはEFSAと共同で人獣共通感染症年次報告書を、また欧州医薬品庁(EMA)およびEFSAと共同で、抗生物質使用量およびヒト・食料生産動物由来細菌の抗菌剤耐性率に関する統合分析の年次報告書を発行した。

  • レジオネラ菌については、開発研究により、国外旅行関連のレジオネラ症患者の情報を交換する欧州疫学情報共有システム(EPIS)の一層の改善が引き続き行われた。

  • 冷凍ベリー類に関連し、ECDCとその国内協力機関によって2013年に特定された複数国にわたるA型肝炎ウイルス(HAV)感染アウトブレイクが2014年も継続した。ECDCは、ベリー類の汚染場所を特定するため、EFSAおよび各加盟国の担当部局による包括的な前向き・後ろ向き追跡調査を支援した。また、各加盟国の専門家からなる諮問会議を主催し、各国が共通のシークエンシング手法を用いることについて合意を得た。この共通の手法により、国や分野(公衆衛生/食品)を超えて、アウトブレイク株の迅速かつ相互に比較可能な形での特定が実現される可能性がある。

  • ECDCは2014年にHAV感染アウトブレイクに関する数編の科学論文を発表した。2015年にはHAVの地域流行に関する各加盟国の国内の状況が明らかになり、これはHAVワクチン定期接種のメリットに関する技術的な議論に役立つであろう。


国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部