(食品安全情報2015年9号(2015/04/28)収載)
世界保健デーは毎年4月7日と定められており、その2015年のテーマは食品安全である。この日を機に今回、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、ヒトのサルモネラおよびカンピロバクター感染の血清学的罹患率(seroincidence)算出ツールを発表し、さらに「欧州連合・欧州経済領域(EU/EEA)での主要な7種類の食品・水由来疾患についてのサーベイランス報告書(2010〜2012年)」を刊行した。
カンピロバクター症およびサルモネラ症は、EU域内で報告される2大胃腸疾患である。しかし、報告患者数は実際に発生する感染患者数のごく一部でしかない。そこで、ECDCが資金提供したプロジェクト研究により、さらに詳細な情報をもたらすツールが開発された。このツールは、任意の時点で測定した血清抗体価(IgG、IgM、IgA)を利用し、これより抗体出現後の時間を推定する。これにより、調査対象の集団でのサルモネラおよびカンピロバクターへの曝露頻度について推定値が算出される。
このツールは、サルモネラ症の血清学的罹患率に関するEU規模での研究(Clin. Infect. Dis. (2014) 59 (11): 1599-1606)を基礎としており、この研究では、加盟国によってサルモネラへの曝露頻度の推定値に10倍の違いがあることが示された。推定罹患率はEU/EEA加盟国での病原体のヒトへの感染圧に関してより正確な情報を提供することから、本ツールは病原体管理プログラムの効果をモニタリングする際の罹患率推定に利用可能である。サルモネラ症患者の報告数は減少しているが、この10倍の違いは継続的なサーベイランスおよび警戒が依然として最重要であることを示している。
「EU/EEAでの主要な7種類の食品・水由来疾患についてのサーベイランス報告書(2010〜2012年)」は、非チフス性サルモネラ症、腸チフス・パラチフス、カンピロバクター症、志賀毒素・ベロ毒素産生性大腸菌(STEC/VTEC)感染症、リステリア症、細菌性赤痢、およびエルシニア症に特化した2報目の疫学報告書である。リステリア症を除くほとんどの疾患では致死率が1%未満であったが、リステリア症では2010〜2012年の平均致死率が16%であった。高齢者でのリステリア感染は特に懸念される問題であり、65歳以上の男性で特に患者数が急増している。