ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.bfr.bund.de/


食品由来病原体:カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(EHEC)およびリステリアへの対策に改善が必要
Pathogens in food: Improvements required to protect against Campylobacter, EHEC and Listeria
07.04.2015
http://www.bfr.bund.de/cm/350/erreger-von-zoonosen-in-deutschland-im-jahr-2013.pdf (報告書全文PDF、ドイツ語)
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2015/10/pathogens_in_food__improvements_required_to_protect_against_campylobacter__ehec_and_listeria-193815.html

(食品安全情報2015年10号(2015/05/13)収載)


 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、ドイツでの人獣共通感染症の疫学状況に関する報告書を毎年発行している。この報告書は、食品を介して伝播する疾患の予防に貢献することを目的としている。2013年のデータの分析により、家禽群におけるサルモネラ管理プログラムの持続的な成功、およびヒトのサルモネラ症患者数の減少が示された。しかしカンピロバクターについては、食品での検出率の低下や報告患者数の減少は認められていない。各種動物および食品での病原体の検出率を相互に比較することにより、畜産に由来する人獣共通感染症病原体によるとたいの汚染を家禽類の場合は十分に防止できていないことが明らかになった。人獣共通感染症を予防するためのあらゆる取り組みにもかかわらず、食品中にまだ病原体が生残している可能性がある。BfRは本報告書の結果から、人獣共通感染症対策を畜産業の現場では継続的に、また家禽の食鳥処理工程では強化して実施する必要性が強調されたとしている。さらに、消費者を食中毒から守るため、食品調理の際には調理場と食品の衛生を厳守しなければならないとも述べている。

 BfRの年次報告書「ドイツの人獣共通感染症病原体(Zoonotic Pathogens in Germany)」に使用されるデータは、各地の関係当局によって収集される。BfRは、これらのデータを評価し、他の連邦機関や国のリファレンス検査機関から提供されるデータと組み合わせて報告書を作成している。例えばロベルト・コッホ研究所(RKI)は、人獣共通感染症病原体による報告患者数のデータを提供している。本報告書は、消費者の健康に関連する病原体およびそれらの感染経路となり得る食品について概説している。これにより、食品の製造工程のすべての段階で人獣共通感染症病原体を排除または低減させる適切な対策を策定することが可能となる。

 今回の報告書は2013年のデータを対象としており、人獣共通感染症対策の成果とともにそれらが直面する課題も明らかにしている。ここ数年間、家禽でのサルモネラ管理対策は成功であったと言える。サルモネラ症は最も一般的な細菌性胃腸疾患の一つで、ドイツでは毎年約19,000人の患者が報告されているが、感染者数も汚染食品検体数も減少が続いている。家禽生産における広範なサルモネラ管理対策によりサルモネラ陽性群は減少したが、食鳥処理過程での生鳥からの汚染が原因で、家禽肉ではその他の家畜の肉よりサルモネラ汚染率が高い状態が続いている。

 最も高頻度に報告される人獣共通感染症は依然としてカンピロバクター症で、ドイツでは2013年に約63,600人の患者が報告された。これと一致して、カンピロバクターは食品から頻繁に検出され、検出率が最も高い食品はやはり家禽肉であった。サルモネラやカンピロバクターなどの病原体の汚染レベルが家禽肉で特に高い理由は、食鳥処理過程での家禽類個体(羽、腸管など)からその肉への病原体の移行の防止対策がこれまで十分な成果を挙げていないことにある。

 リステリア(Listeria monocytogenes)やベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)などのその他の病原体は食品からまれにしか検出されない。しかし、これらの病原体については、疾患の発生頻度よりその重症度の方が臨床上重要である。L. monocytogenesは2013年に水産製品で最も多く検出され、菌数が100 CFU/gを超えるそのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品もあった。またL. monocytogenesは、ヨーグルトなどの乳製品や野菜ベースの食品からもまれに検出された。VTECはウシに蔓延しており、2013年も牛肉から繰り返し検出された。ウシおよび牛肉からはヒト疾患の原因となる血清群や株のVTECも検出されている。

 全体として、ドイツの人獣共通感染症に関する本報告書は、食品の製造工程に存在する疾患病原体についての情報を提供し、食品由来疾患の予防対策の策定に役立つ適切な手段であることがわかる。

 本報告書は、あらゆる努力にもかかわらず、食品は病原体に汚染される可能性があることを示している。これにより、民間や地域の食品提供施設だけでなく一般家庭でも、食品や調理場の衛生が食品由来疾患の予防にいかに重要であるかが明らかである。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部