ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.bfr.bund.de/


家禽肉に関するFAQ
Selected FAQs on poultry meat
26.03.2015 (Updated FAQ from 19 March 2015)
http://www.bfr.bund.de/cm/349/selected-faqs-on-poultry-meat.pdf
http://www.bfr.bund.de/en/selected_faqs_on_poultry_meat-54623.html

(食品安全情報2015年9号(2015/04/28)収載)


 近年、ドイツでは家禽肉の消費量が大幅に増えている。1人当たりの消費量は1952年には約1.2 kgであったが、1978年までに10 kgを超え、2013年は約19.4 kgであった。

 増加の主な理由は、安価であることのほか、低カロリーで消化の良い食品を望む消費者の要求に合っていることである。鶏肉が最も多くメニューに載っているが、七面鳥肉も以前に比べ人気が高くなっている。カモ、ガチョウなどの肉の消費量はかなり少ない。市場には、食鳥処理された家禽のほか、家禽の様々な部位、内臓および種々の家禽肉製品が出荷されている。

 他方、家禽肉とその製品は傷みやすい食品であり、適切に取り扱わないと食品由来疾患の感染源となり得る。したがって、調理の際には特に注意が必要である。カンピロバクターやサルモネラなどの病原菌の感染を避けるには、台所や食品の衛生に関する原則を厳守する必要がある。

 以下は、家禽肉とその適切な取り扱いに関して頻繁に寄せられる質問とその回答をドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)がとりまとめたものである。


腐敗菌と病原菌の違いは何か

 腐敗菌は、増殖する際に酵素を産生し、これにより食品中の脂質、糖質、デンプンおよびタンパク質を分解する。この過程で生じる代謝産物により、食品の匂い、味、食感および外見が変化する。腐敗した食品の喫食で必ずしも病気になるわけではないが、喫食はすべきでない。

 食品中に存在する病原菌には、カンピロバクター、サルモネラなどが含まれる。病原菌に汚染されても食品の外見、匂いおよび味は変わらないため、通常はそのような食品を見分けることはできない。


食品由来感染とは何か

 「食品由来感染」または「食中毒」は、食品の内部または表面に存在する病原体が原因の疾患を意味している。ドイツで最も頻繁に発生するのは、カンピロバクターまたはサルモネラによる食品由来細菌感染である。


家禽肉はなぜ急速に腐敗するのか

 家禽肉は一般に腐敗しやすい。これは冷蔵した家禽肉製品にも当てはまる。その理由は、低温への耐性を示し、かつタンパク質を分解する性質を有する細菌が存在することである。これらの細菌の数が2倍になるまでに要する時間は、4℃で7〜8時間、2℃で13〜14時間、0℃で24時間以内である。家禽肉を汚染する細菌として、サルモネラ、カンピロバクター、リステリア(Listeria monocytogenes)、エルシニア(Yersinia enterocolitica)などの病原菌が含まれる場合がある。このため、冷蔵が中断されることは特に危険である。室温では、菌の増殖によって4〜6時間後に早くも表面の腐敗が始まる。表面の細菌が増殖すると、肉の内部に存在する可能性がある細菌も増殖し、また、より多くの細菌が表面から内部に侵入する。


家禽肉の保存可能期間はどれくらいか

 4℃で保存すると、7〜8日後には腐敗の始まりを示すレベルの細菌数が家禽肉の表面に認められる。したがって、冷蔵した家禽肉は5〜6日以内に喫食すべきである。皮なしの家禽部分肉は通常は表面の汚染レベルがそれほど高くないため、保存可能期間が1〜2日延長される。保存の温度が約0℃に保たれた場合は、腐敗の進行が遅れるため保存可能期間が数日延長される。高濃度のCO2を含む保護ガスとともに包装すると、保存可能期間は約2倍の長さになる。

 冷凍家禽肉(鶏、七面鳥、カモ、ガチョウなど)の保存可能期間は以下の表の通りである。


家禽肉の正しい保存法とはどのようなものか

 生鮮家禽肉は−2℃〜+4℃で保存しなければならない。また、保存中には「消費期限(use-by date)」が表示されていなければならない。冷蔵または冷凍以外に何も処理をしなかった場合は、家禽肉を「生鮮」と表示しなければならない。冷蔵家禽肉の保存可能期間は種々のパラメータ、すなわち、保存温度、保存開始時の菌数、とたい内部および表面の乾燥の程度、包装方法などによって変化する。保存可能期間は、家禽肉製造業者が業務の一環として独自の調査結果にもとづき決定している。


冷凍家禽肉を解凍する際に注意することは何か

 細菌やウイルスなどの微生物は冷凍では死滅しない。冷凍前に既に家禽肉に存在していた腐敗菌および病原菌は、冷凍、保存および解凍の過程を経ても生存できる。したがって、冷凍家禽肉を解凍する際には健康リスクが生じる。また、冷凍前に汚染微生物により産生されたプロテアーゼやリパーゼなどの酵素は、冷凍保存中も活性を維持する。

 家禽肉を解凍する際には肉汁(食鳥処理時に吸収された洗浄水が混ざっている)が流出し、肉表面の水分含量が増える。細菌の増殖を防ぐためには、食品の調理または加工を解凍後直ちに行うべきである。解凍に伴い生じた水には病原菌が含まれていることが多く、交差汚染を防ぐためにこれを取り除くべきである。

 家禽肉を冷蔵庫内などの冷蔵下で解凍した場合、肉の品質低下は最小限に留まる。このように時間をかけて解凍すると肉汁の一部が肉に再吸収され、さらに肉の表面が細菌が急速に増殖できるような温度に曝されることがない。4℃での解凍時間は、鶏肉は約12時間、カモ肉は約22時間、ガチョウ肉は38時間以内である。室温(約20℃)では解凍時間が半減する。家禽肉を最短時間で解凍する方法は、電子レンジを用いる方法である(鶏肉で約30分)。解凍時間が短いと微生物の増殖が起こらない。しかし、冷蔵温度で解凍する場合に比べ、より多くの解凍水が生じる。


家禽肉を取り扱う際に特に重要な衛生規則は何か

 家禽肉を調理する際には、交差汚染を防ぐことが特に重要である。そのためには、以下の一般的な衛生規則を守ることが役に立つ。

  • 生の家禽肉の保存と調理は、他の食品、特に喫食前に再加熱しない食品とは別に行う。
  • 家禽肉製品の調理と保存には、他の食品とは別の器具や容器を使用する。
  • 調理の各段階ごとに、水と石けんを用いて手指を丁寧に洗う。
  • 生の家禽肉製品の保存に使用した後に洗浄していない容器に、加熱済みの家禽肉を入れない。
  • 生の家禽肉製品に接触した器具や表面(調理台、シンクなど)は、ぬるま湯と液体洗剤で丁寧に洗う。
  • 包装材や解凍水などは速やかに廃棄しなければならない。

 さらに、家禽肉および卵を調理する際は以下を守るべきである。
  • 家禽肉には病原体が含まれている可能性があるため、これを不活化するために十分に加熱しなければならない。家禽肉のあらゆる部分を十分に加熱し、中心部が70℃以上に達した状態を2分間以上維持しなければならない。卵の白身と黄身は堅く固まるまで加熱する。
  • 喫食前に再加熱しない料理に生卵または半熟卵を使用しない。


国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部