ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からの大腸菌O104関連情報
http://www.bfr.bund.de/en/home.html


2011年に発生した腸管出血性大腸菌(EHEC)アウトブレイク
EHEC Outbreak 2011: Investigation of the Outbreak Along the Food Chain
03/2012
http://www.bfr.bund.de/cm/350/ehec-outbreak-2011-investigation-of-the-outbreak-along-the-food-chain.pdf

(食品安全情報2012年11号(2012/5/30)収載)

 2011年5〜7月、第二次大戦後のドイツとしては最大規模の大腸菌アウトブレイクが発生し、ドイツのみならず欧州全体がこの腸管出血性大腸菌(EHEC)アウトブレイクへの対応に追われた。最終的に、極めて可能性の高い感染源として、腸管凝集性EHEC O104:H4に汚染されたエジプト産のフェヌグリーク種子が特定された。

 2011年5月にアウトブレイクが発生したとき、ドイツにはEHEC O104:H4を検出可能な確立された検査法がなかった。このため、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の専門家の協力を得て、2011年5月末にドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)の大腸菌リファレンス検査機関が検査法を確立し、その後、この方法はドイツ連邦州の各検査機関でも使用できるようになった。しかし、疑いのある感染源として浮上した種子およびスプラウトの検査を行ったにも関わらず、EHEC O104:H4がそれらに存在する微生物学的エビデンスは得られなかった。

 患者クラスター、食品の出荷記録、流通経路のデータなどの調査により、ドイツでの患者発生および地域アウトブレイクの原因として、ニーダーザクセン州の1園芸農場から出荷されたスプラウトが示唆された。その後、当該スプラウトまたはスプラウトの種子がEHECに汚染された場所の調査が行われた。種子の流通に関する前向きおよび後ろ向きの追跡調査により、エジプトから輸入されたフェヌグリークの種子が汚染源である可能性が高いとされた。

 今回のEHECアウトブレイクでは、地域の監視当局、各州および連邦の消費者保護省、欧州の諸機関および世界保健機関(WHO)のそれぞれが対応を行った。この緊急事態に対処するために結成されたタスクフォースが非常に優れた成果を上げたことから、連邦食料・農林・消費者保護省(Federal Ministry of Food, Agriculture and Consumer Protection)は、これをさらに発展させ、恒常的な危機管理機関とすることも考慮している。

 BfRはアウトブレイク調査に大きな貢献を果たし、他の関係当局、メディア、一般消費者などに情報を提供した。また、リスク評価の実施、アウトブレイク調査における連邦および地域当局への科学的根拠の提供、国内対策の決定、欧州全体での科学情報の交換、リスクコミュニケーションなどを担当した。

 本書には、2011年のEHECアウトブレイクに対するBfRの活動の主要な成果がまとめられており、以下にその一部について表題を紹介する。

○アウトブレイクの時系列的概要

○後ろ向きおよび前向き追跡調査の方法

○国立大腸菌リファレンス検査機関の成果

 ・アウトブレイク発生当時の検査体制

 ・血清型O104:H4などのEHEC検出のためのリアルタイムPCR法の開発

 ・そのまま喫食可能なサラダおよびスプラウトから、EHEC O26、O104、O111、O118、O121、O145、O157および腸管凝集性EHEC O104:H4を特定および分離するための迅速かつ信頼性の高い方法の開発

○リスク評価の時系列的概要

 ・2011年5〜6月のEHEC O104:H4アウトブレイクにおける原因食品としてのスプラウト、胚芽およびスプラウト栽培用種子

 ・スプラウトおよび胚芽以外の食品に加工するためのフェヌグリーク種子におけるEHEC O104:H4

 ・推奨される対策の根拠となった分析結果の更新情報

○農業生産におけるEHECの汚染および分布

○リスクコミュニケーション


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部