国立医薬品食品衛生研究所 薬用植物栽培棟

法規制されている有害植物の流通を防止するためには,その植物を正しく鑑別する方法やその植物の含有を検出する試験法が必要です.また,漢方薬の原料のほとんどは植物に由来しますので,漢方薬を安全かつ有効に利用するためには,正しい材料植物の鑑別法や確認試験,及び,誤った植物材料の混入を検出する純度試験が必要です.これらの試験方法を確立するためには,研究対象の植物を生きた状態で保管する必要があります.主にこの目的のために,国立医薬品食品衛生研究所では,分析機器が配備された実験室と約50平米の温室から構成される薬用植物栽培棟を保有しています.

温室全景(手前が作業室と機械室,奥が栽培室)

見頃の植物

沿革

 現代医療における薬用植物の役割は大きく2つあります.1つは,生薬の原料,生薬製剤,漢方製剤など,天然物医薬品の原料という,多くの方がイメージしやすいものです.もう1つの役割は,含有成分が新しい化学薬品の元になるという創薬資源としての役割です.21世紀の現在でも,新しく生み出される医薬品の約半数は,植物や微生物など,天然資源の成分に由来しています.
 このような背景から,医薬品の有効性,安全性を担う当所では,前身の東京司薬場時代より薬用植物の試植が行われており,1922年には埼玉県粕壁町に,薬用植物栽培試験場が設置され,和歌山,伊豆,種子島,北海道に順次,分場が設置されました.2005年になり,栽培試験場は,組織再編により,当所から離れました.
 このため,当所には薬用植物を維持・管理する機能が失われておりましたが,2017年の殿町移転の際に,薬用植物栽培棟が新設され,現在,100点ほどの遺伝資源を管理しています.