食安発第1126001号

 

食安発第1126001号

平成15年11月26

 

 

都道府県知事

各 保健所設置市長   殿

特別区長

 

 

厚生労働省医薬食品局食品安全部長

 

 

 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令及び食品、添加物等の

規格基準の一部改正について

 

 

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号。以下「乳等省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月厚生省告示第370号。以下「告示」という。)の一部が、それぞれ平成15年11月26日厚生労働省令第170号及び厚生労働省告示第369号をもって改正されたので、下記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。

 

 

第1 改正の内容

 1 乳等省令関係

   乳に残留する動物用医薬品(ジヒドロストレプトマイシン及びストレプトマイシン)について、残留基準値及び試験法を新たに設定したこと。

 

 2 告示関係

  (1) パツリンについて

  パツリンは、ペニシリウム属やアスペルギルス属等の真菌によって産生されるかび毒であり、真菌が付着した果実等から検出され、パツリン汚染の可能性の高い主要食品としてりんご果汁が知られている。今般、りんご果汁についてパツリンの汚染実態調査が行われ、一部のものから比較的高濃度のパツリンが検出されたことから、食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の審議結果を踏まえ、清涼飲料水の成分規格の一部を改正し、りんごジュース及び原料用りんご果汁について、パツリン規格を設定したこと。

   (2) 動物用医薬品の残留基準について

   食肉に残留する3品目の動物用医薬品(サラフロキサシン、ジヒドロストレプトマイシン及びストレプトマイシン、ダノフロキサシン)について、残留基準値及び試験法を新たに設定したこと。

 

第2 運用上の注意

パツリンについて

(1) りんごの搾汁及び搾汁された果汁のみを原料とする清涼飲料水とは、果汁分100%のりんごジュース及び原料用りんご果汁であり、りんごジュース(ストレート)、りんごジュース(濃縮還元)、りんご濃縮果汁等が含まれること。また、香料や酸化防止剤等を添加したものを含むものであること。

2)ご以外の果実の搾汁や果汁、野菜汁等を含む果実ミックスジュース、果実・野菜ミックスジュース、果汁入り飲料等の清涼飲料水にあっては、原料用りんご果汁に成分規格を設定することにより、衛生確保を図ったものであること。

(3)りんご濃縮果汁等にあっては、告示の試験法に示したとおり、濃縮した倍数の水で希釈した検体について、基準値が適用されるものであること。

 

第3 施行期日

平成16年6月1日から施行する。

 

 

<パツリン告示法>

りんごの搾汁及び搾汁された果汁のみを原料とするものにあつては、パツリンの含有量が0.050ppmを超えるものであつてはならない。この場合の試験法は、次に掲げるパツリン試験法又はこれと同等以上の性能を有すると認められる試験法とする。

 1.装置

紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ及び液体クロマトグラフ・質量分析計又はガスクロマトグラフ・質量分析計を用いる。

2.試薬・試液

次に示すもの以外は、第1 食品の部D 各条の項の○ 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの2 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格の試験法の目の(2) 試薬・試液に示すものを用いる。

トリメチルシリル化剤 N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド0.5mlに酢酸エチルを加えて20mlとする。

パツリン標準溶液 パツリンを酢酸エチル又はアセトニトリルを加えて溶かし、調製する。

3.標準品  

パツリン 本品はパツリン98%以上を含む。

融点 本品の融点は110111°である。

4.試験溶液の調製

a 抽出法

検体5.0g(希釈して飲用に供する清涼飲料水にあつてはその飲用に際して希釈する倍数の水で、濃縮した原料用果汁にあつてはその濃縮した倍数の水で希釈したもの)を正確に採り、3050mlの共栓付き試験管に入れ、酢酸エチル10mlを加える。1分間激しく振り混ぜた後、静置し、酢酸エチル層を他の3050mlの共栓付き試験管に移す。水層に酢酸エチル10mlを加え、上記と同様に操作して、酢酸エチル層を上記の共栓付き試験管中に合わせる操作を2回繰り返す。   

b 精製法

a の抽出法で得られた溶液に1.5%炭酸ナトリウム溶液2mlを加え、速やかに1020秒間激しく振り混ぜる。酢酸エチル層を、約10gの硫酸ナトリウムを載せた漏斗又は液層分離ろ紙を用いて減圧濃縮器中にろ過する。残つた炭酸ナトリウム層に酢酸エチル5mlを加え30秒間激しく振り混ぜた後、上記と同様に操作して、ろ液をその減圧濃縮器中に合わせ、40°以下で約2mlに濃縮する。これをガラス試験管又はバイアルに移す。次いで、少量の酢酸エチルを用いて減圧濃縮器を洗い、上記の容器に合わせる操作を3回繰り返し、40°以下で窒素気流下で酢酸エチルを除去する。この残留物に酢酸水溶液(pH 3.64.01.0mlを正確に加えて溶かし、激しく振り混ぜた後、孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、これを試験溶液とする。

ガスクロマトグラフ・質量分析計用試験溶液にあつては、上記の残留物にトリメチルシリル化剤0.5mlを加え、栓をして振り混ぜた後、室温で60分間放置し、これを試験溶液とする。

5.操作法

a 定性試験

紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフを用いて、次の操作条件で試験を行う。試験結果はパツリン標準溶液と一致しなければならない。

操作条件

カラム充てん剤 シラノール基のフルエンドキャップ処理済みオクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)を用いる。

カラム管 内径4.04.6o、長さ250oのステンレス管を用いる。

カラム温度 40°

検出器 波長276nm又は290nmで操作する。

移動相 アセトニトリル及び水の混液(496)を用いる。パツリンが約14分で流出する流速に調整する。

b 定量試験

a 定性試験と同様の操作条件で得られた試験結果に基づき、ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う

 確認試験

@ 高速液体クロマトグラフ・質量分析計を用いて試験を行う場合

a 定性試験と同様の操作条件で液体クロマトグラフィー・質量分析を行う。試験結果はパツリン標準溶液と一致しなければならない。また、必要に応じてピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。

A ガスクロマトグラフ・質量分析計を用いて試験を行う場合

次の操作条件で試験を行う。試験結果はパツリン標準溶液について4.試験溶液の調製のガスクロマトグラフ・質量分析計用試験溶液と同様に操作をして得られたものと一致しなければならない。また、必要に応じ、ピーク高法又はピーク面積法により定量を行う。

操作条件

カラム 内径0.250.25o、長さ2530mのケイ酸ガラス製の細管に、ガスクロマトグラフィー用35%フェニルポリシルフェニレンシロキサンを0.251.5μmの厚さでコーティングしたもの。

カラム温度 80゜で2分間保持し、その後毎分10゜で昇温する。150゜に到達後、毎分5゜で昇温し、230゜に到達後15分間保持する。

試験溶液注入口温度 230°

注入方式 スプリットレス

検出器 230°で操作する。

ガス流量 キャリヤーガスとしてヘリウムを用いる。パツリンが約14分で流出する流速に調整する。

 

 

                   もっと知りたい方のために