抗 癌 剤 に 関 す る 研 究 : タ キ サ ン 系 抗 癌 剤


 本研究は、国立がんセンターとの共同研究である。
 パクリタキセルおよびドセタキセルは、それぞれ太平洋イチイの樹皮、ヨーロッパイチイの針葉の抽出物に由来する抗がん剤であり、タキサン系抗癌剤と総称される。その作用機序としては、微小管に結合し、微小管の重合促進・安定化をもたらし細胞分裂を阻害すると考えられている。これらタキサン系抗癌剤は、既に非小細胞肺がん、乳がん等多くのがん腫に対する高い有効性が確認されており、がん治療に幅広く用いられている。タキサン系抗癌剤の毒性(副作用)としては、白血球減少、好中球減少、末梢神経障害、悪心嘔吐等がある。タキサン系抗癌剤の薬物血中濃度には、通常5-10倍の個体差があり、血中パクリタキセル濃度上昇に伴う重篤な毒性の出現が観察された症例も報告されている。
 パクリタキセルは、主としてCYP2C8、CYP3A4により代謝され、また薬物トランスポータの1つであるP-糖タンパク(MDR1/ABCB1)の基質となることが知られている。一方、ドセタキセルはCYP3A4による代謝を受ける。従って、これらの薬物代謝酵素や薬物トランスポータの遺伝子多型により、薬物動態の個人差が生じている可能性がある。さらに、これらの薬物並びにその添加剤が原因と推定されるアレルギー性副作用も比較的高頻度にみられる。本研究では、タキサン系抗がん剤の体内動態の異常やアレルギー性副作用の発症に関連する遺伝子多型を同定する。

 

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更新日: 2002年8月30日
国立医薬品食品衛生研究所 薬剤反応性遺伝子解析プロジェクトチーム