(食品安全情報2015年10号(2015/05/13)収載)
オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)の研究者がとりまとめを行った国際研究の成果が「Emerging Infectious Diseases」誌に発表され、ノロウイルス感染アウトブレイク事例の約14%の原因が汚染食品であることが示された。また、世界保健機関(WHO)は、2015年4月7日の世界保健デー(World Health Day)に食品安全に関する問題への挑戦と機会を強調した。このような背景からRIVMは、食品由来疾患による被害への認識を深めるため、この論文を紹介する。
世界のノロウイルス疾患実被害
ノロウイルスは世界中で最も頻繁に見られる胃腸炎の原因病原体であり、重症化することもある。罹患すると就業が不可能になる場合が多く、アウトブレイクが発生した場合は病棟の閉鎖など大きな医療コストが生じる。疾患実被害を低減させる方法を考察するには、ノロウイルスがどのように伝播するかを把握することが不可欠である。汚染食品を介する伝播はノロウイルスのいくつかある伝播経路の一つで、予防することができる。
ノロウイルスなどに見られる食品由来感染は、疾患実被害のかなりの部分を占めている。ノロウイルス感染について、疾患実被害の規模、およびそのうちのどの程度が汚染食品を原因としているかを把握することが極めて重要である。このことにより、食品安全当局による汚染食品の回収、イガイや冷凍ベリーの推奨される調理法の周知などの対策の有効性について知見が得られる。WHOは、食品由来ノロウイルス疾患実被害の世界各地の状況を明らかにするため、2006年に自らが主導する活動を開始した。
論文の概要
3つのサーベイランスシステム(Noronet、CaliciNet、EpiSurv)が収集したノロウイルス感染アウトブレイクのデータを分析した。その結果、世界のすべてのノロウイルス感染アウトブレイク事例のうち、約14%が汚染食品に起因することが示された。この値は、世界中で予防可能なノロウイルス疾患実被害の最終的な推定に使用可能である。
家庭での食品由来感染の予防
多くの食品由来感染は家庭の台所に由来し、食品安全にさらに注意することで予防できる。調理前の手洗い励行などの衛生対策のほか、生の食品と加熱済み食品とでは使用する包丁とまな板を分けるなどの交差汚染対策を行うことが重要である。
(原著論文)
Norovirus Genotype Profiles Associated with Foodborne Transmission, 1999-2012
Emerging Infectious Diseases, Vol. 21, No. 4, 592-599 (April 2015)
http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/21/4/14-1073_article