米国農務省経済研究局(USDA ERS)からのノロウイルス関連情報
http://www.ers.usda.gov/


米国国内感染の主要な食品由来疾患による経済的損失
Economic Burden of Major Foodborne Illnesses Acquired in the United States
Economic Information Bulletin Number 140
May 12, 2015
http://www.ers.usda.gov/media/1837786/eib140_summary.pdf (報告書要約PDF)
http://www.ers.usda.gov/media/1837791/eib140.pdf (報告書全文PDF)
http://www.ers.usda.gov/media/1837796/eib140.zip (図ファイル)
http://www.ers.usda.gov/publications/eib-economic-information-bulletin/eib140.aspx

(食品安全情報2015年11号(2015/05/27)収載)


背景と問題点

 米国では、毎年国民の6人に1人が食品由来疾患に罹患している。政府や関連業界などは、食品由来疾患を予防しようと多額の資金を費やしている。このような資金を最も適切に配分するためには、食品業界の経営者および政策決定者は、これらの対策の社会的価値、および資金の投入対象を絞る方法を把握する必要がある。疾患による経済的損失の推定は、食品由来疾患を予防するために人々が負担を受け入れてもよいと考える金額の控えめな見積もりを提示する。本報告書は、米国で15種類の主要な食品由来病原体により発生する年間の経済的損失について、最近の推定額を概説している。また、以下の項目を病原体別に記載している。

  • 当該病原体の感染によって起こり得る病気の経過

  • 食品由来疾患の年間の罹患率と経済的損失の概要、および他の食品由来疾患との比較

  • 米国での食品を介した病原体への曝露により発生する各疾患について、その転帰ごとの年間の患者数

  • 病原体への感染によって発生した疾患による年間の経済的損失を転帰別に示した円グラフ


本研究から得られた結果

 食品由来病原体が米国民にもたらす経済的損失は年間155億ドル(2013年のドル価値に換算)を超えている。このうちの90%は5種類の病原体による損失である。患者1人あたりの経済的損失の推定額は、サイクロスポラ(Cyclospora cayetanensis)の202ドルからビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)の330万ドルまで大きく異なっている。

  • 病原体が特定された米国のすべての食品由来疾患の患者、入院患者および死亡者の95%以上は、15種類の病原体が原因で発生している。この15種類の病原体とは、カンピロバクター属菌、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クリプトスポリジウム属、サイクロスポラ(C. cayetanensis)、リステリア(Listeria monocytogenes)、ノロウイルス、非チフス性サルモネラ属菌、赤痢菌属菌、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157、STEC non-O157、トキソプラズマ原虫、ビブリオ・バルニフィカス、腸炎ビブリオ、その他のビブリオ属菌(コレラ菌を除く)、およびエルシニア(Yersinia enterocolitica)である。

  • これら15種類の病原体による経済的損失の84%は患者の死亡によるものである。このことから、死亡を防ぐことの国民にとっての重要性と、死亡を免れた患者に費やされた経済的損失(医療費+生産性の損失)の推定値は非致命的な疾患を防ぐために負担してもよい額の目安であるという事実が示される。

  • 経済的損失総額による病原体の順位付けは、当該病原体関連の死亡による経済的損失にもとづく順位付けをほぼ反映しているが、次に示すようにいくつかの明らかな例外もある。カンピロバクターによる年間の死亡者数はノロウイルスよりわずかに多いが、ノロウイルスは非致命的な患者が非常に多いため、経済的損失総額はカンピロバクターより大きい。ビブリオ・バルニフィカス、エルシニア、およびSTEC O157の死亡関連の経済的損失額はウェルシュ菌を上回っているが、ウェルシュ菌は医療費および生産性の損失額が大きいため、経済的損失総額ではこれら3菌を上回っている。

  • 米国国内感染の食品由来疾患の推定罹患率、およびそれにもとづく経済的損失の推定額には大きな不確実性が存在する。米国疾病予防管理センター(US CDC)は、上記15種類の病原体による食品由来疾患の患者数を年間460万〜1,550万人と推定している。この値にもとづくと、経済的損失は年間48億〜366億ドル(2013年のドル価値に換算)であると推定される。


研究方法

 本報告書は、最近発表された複数の原著論文にもとづき、食品由来疾患による経済的損失の推定値を記載している。これらの論文に発表された推定値は、インフレおよび所得の伸びの影響を2013年のドル価値に換算した値が、米国農務省経済研究局(USDA ERS)のサイト「米国の主要な食品由来疾患による経済的損失の推定(Cost-of-Illness Estimates for Major Foodborne Illnesses in the U.S)」から入手可能である。

http://www.ers.usda.gov/data-products/cost-estimates-of-foodborne-illnesses.aspx

 本報告書は、上記のERSデータサイトの知見をまとめたもので、さらに当該論文にもとづき、幅広い層を対象とした付加的な解説を提供している。当該Webサイトでは、ユーザーは経済的損失の推定値がモデル生成時の仮定にどの程度感受性かを詳しく調べることができる。また同サイトは、今後インフレおよび所得の伸びについて推定値を更新する際に必要な情報も提供している。

 本報告書の基礎となる推定値は、11種類の病原体を追加し、他の4種類の病原体については値を更新することにより、経済的損失に関するERSの以前の推定を拡張・更新したものである。これらの新しい推定値は、死亡を免れた患者に費やされた経済的損失の推定値と死亡を回避する対策のために負担してもよい費用を合計したものである。新しく追加された病原体についての推定には、入院費用に関する全国入院患者サンプルデータ(National Inpatient Sample data)や既存の科学文献などのデータソースが複合的に用いられた。また、すべての病原体の経済的損失の推定に、CDC による米国国内感染の食品由来疾患の罹患率および関連する入院患者数・死亡者数の推定値(2011年)が使用されている。疾患の種々の転帰の可能性についてのモデリングでは、FoodNet(食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク)のデータを参考にし、また科学文献のレビューも行った。疾患の継続期間および転帰の重症度についてのモデリングでは、臨床医学分野の文献のレビューにもとづき推定を行った。



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部