アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)からのノロウイルス関連情報
http://www.hpsc.ie/hpsc/


ノロウイルスの流行の最近の傾向
HPSC outlines latest norovirus trends
Epi-Insight, volume 14 issue 2, February 2013
http://ndsc.newsweaver.ie/epiinsight/epq9pqq0uzsqldxs0g4hal?a=1&p=31757905&t=17517774

(食品安全情報2013年5号(2013/03/06)収載)

 アイルランドでは、2004年にノロウイルスの感染患者とアウトブレイクの届け出が義務化され、それ以降は一貫した方法でデータが集約されている。ノロウイルスは定期的に流行を繰り返し、直近での大規模な流行のシーズンは2002〜2003年であった。最近で最も被害が大きかったこの流行で原因となったウイルス株は、新規の表面抗原を保有していたため全国民がこの株に感受性をもつことになったと考えられた。一方、2010〜2011年および2011〜2012年のシーズンは、ノロウイルスの活動が特に低レベルであった。2012〜2013年のシーズンは、現時点ではノロウイルスの感染者数が著しく増加している。

 諸外国のデータとの比較により、ノロウイルスの活動が低レベルであるシーズンには人口の1%以上が感染すると推定される。活動の急上昇がみられるシーズンは、この値が3〜5%程度に達する可能性がある。典型的なノロウイルスシーズンは期間が約20週で、人口の3〜5%が被害を受けるとすると、毎週6,600〜11,000人の患者が発生することになる(活動が低レベルのシーズンでは発生患者数は毎週約2,000人と見込まれる)。2000年12月〜2001年11月(ノロウイルスの活動が非常に高かった期間を含む)に南北アイルランドの急性胃腸炎について調査が実施され、その結果が2003年に発表されている。これによると、アイルランド島では胃腸炎患者が毎週約60,000人発生していたと推定され、この数字はアイルランド共和国では毎週約45,000人に相当するものであった。これらのデータから、毎週2,000〜11,000人のノロウイルス患者の発生は過小推定の可能性があることが示唆される。

現在の状況

 2012年10〜12月には、地域の病院/長期滞在型介護施設38カ所、居住型福祉施設31カ所および病院25カ所において計1,956人のノロウイルス患者が発生した。患者が発生した長期滞在型介護施設の数から判断すると(当該施設でのアウトブレイクの検出に有利なサーベイランスバイアスの問題があるものの)、被害を受けやすい患者が多数感染した可能性が高く、このうち1人は死亡したことが明らかになっている。全国GP(一般開業医)定点サーベイランスシステムによると、胃腸炎の患者数はノロウイルス感染の届出数と並行して増加している。

 2013年はノロウイルスの感染患者数が著しく増加している。第1〜4週までのノロウイルスの患者数(週ごとの届け出数)は、それぞれ63人、84人、80人、73人であった(2013年1月25日現在)。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部