Eurosurveillanceのノロウイルス関連情報
http://www.eurosurveillance.org/


遺伝子型II.4の新しい変異株の出現に関連の可能性があるノロウイルス活動の2012年後半における世界的な上昇
Indications for Worldwide Increased Norovirus Activity Associated with Emergence of a New Variant of Genotype II.4, Late 2012
Eurosurveillance, Volume 18, Issue 1, 03 January 2013
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=20345

(食品安全情報2013年1号(2013/01/09)収載)


 2012年後半にノロウイルスの活動が世界的に上昇している。NoroNetネットワークを通じて共有されている分子生物学的データは、この上昇がノロウイルス遺伝子型II.4の新しい変異株(Sydney 2012)の出現と関連していることを示している。医療機関は今シーズンのノロウイルスの深刻な流行に対し準備を整えるべきである。


 英国、オランダおよび日本では、疫学サーベイランスおよび検査機関サーベイランスにより、2012年後半のノロウイルスの活動が昨シーズンに比べ高レベルであることが示されている。同様にオーストラリア、フランスおよびニュージーランドでも、未発表データによればウイルス活動の上昇がみられている。現段階では大部分の国でノロウイルスのサーベイランスがまだ限定的な時期なので、これらの国における上昇が今シーズンの流行の開始を示しているのか、または実際に患者数の純増を伴っているのかを判断するのは難しいが、英国については後者に該当すると考えられる。2012年11月29日、12月4日および6日にProMED-mail(http://www.promedmail.org)は、イングランドの病院でノロウイルス感染アウトブレイクの件数が大幅に増加したこと、イングランドおよびウェールズのノロウイルスの検査機関確定患者数(院内感染および市中感染)が昨シーズンの同時期に比べ64%多かったこと、日本でノロウイルス感染に関連して高齢者が死亡したことを報告した。オーストラリア、フランス、ニュージーランドおよび日本からNoroNetの分子生物学的サーベイランスデータベースに今シーズンはじめに登録されたデータによると、今回のウイルス活動の上昇は遺伝子型II.4(GII.4)の新しい変異株の出現に関連していると考えられる。この変異株(Sydney 2012)は2012年3月に初めてオーストラリアから報告され、塩基配列がGenBankに提出された(アクセス番号:JX459908.1)。米国ではこの変異株は、2012年9月には検査機関確定アウトブレイク22件中5件(23%)で、11月には同71件中37件(52%)で検出された(米国ノロウイルスサーベイランスネットワークCaliciNetの記録)。欧州諸国の中で今のところウイルス活動の上昇を報告していないベルギーおよびデンマークでも、この新しい変異株がそれぞれ2件(2012年9月と12月)および1件(2012年11月)のアウトブレイクで検出されている。NoroNetに参加している他の国からは現在のところこの新しい変異株の検出は報告されていない。

 GII.4 Sydney 2012株を正しく同定するため、Norovirus Typing Toolのリファレンスセットの更新が行われた。このWebベースのツール(http://www.rivm.nl/mpf/norovirus/typingtool)はノロウイルス株の遺伝子型の決定のために一般公開されており、ノロウイルスの命名法の標準化にも貢献している。

 NoroNet(http://www.noronet.nl)はノロウイルスの分子生物学的サーベイランスおよび疫学サーベイランスに関する世界的なネットワークであり、ヨーロッパ、アジアおよびオーストラレーシアのNoroNet加盟国はこれを介してノロウイルスアウトブレイクのデータ、塩基配列、およびその他の情報を共有してきた。すべてのNoroNet加盟国は、分析ツールやNoroNetデータベースを利用することができる。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部