米国疾病対策センター(US CDC: Centers for Disease Control)からのノロウイルス関連情報
http://www.cdc.gov/


全国アウトブレイク報告システム(米国)による急性胃腸炎のサーベイランス
Acute Gastroenteritis Surveillance through the National Outbreak Reporting System, United States
Emerging Infectious Diseases, Volume 19, Number 8 - August 2013

http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/19/8/pdfs/13-0482.pdf(PDF版)

http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/19/8/13-0482_article.htm

(食品安全情報2013年22号(2013/10/30)収載)

要旨

 2009年に導入された米国の全国アウトブレイク報告システム(NORS)は、あらゆる感染系路による急性胃腸炎(AGE)アウトブレイクのサーベイランスを実施している。サーベイランスの最初の2年間のデータによると、最も重要な病因物質はノロウイルスであることが明らかになった。感染経路および暴露の場所を病因物質ごとに特定することは予防策の策定に役立つ可能性がある。

調査結果

 米国では、アウトブレイク(共通の食品や場所などに疫学的に関連し類似の症状を呈した患者が2人以上発生する事例)は、全米50州、ワシントンDC、米国海外領土(米領サモア、グアム、北マリアナ諸島、プエルトリコ、米領ヴァージン諸島)および自由連合州(ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国)によりNORSを介して報告される。NORSが稼働を開始したのは2009年2月であるが、2009年1月1日以降に発生したアウトブレイクのデータを報告するよう推奨されている。

 本調査では、NORSを介して報告されたAGEアウトブレイクのうち、初発患者の発症日が2009年1月1日〜2010年12月31日であるアウトブレイクのデータを解析対象とした。通常はAGEの症状を呈さない疾患(リステリア症、レジオネラ症、A型肝炎など)のアウトブレイクは解析対象から除外した。初発患者の発症日、主要な感染経路、病因物質(確定または疑い)、暴露の場所、患者・入院患者・死亡者の数などのアウトブレイクの概要を解析した。主要な感染経路については、各地での公衆衛生調査の結果および米国疾病予防管理センター(CDC)のガイダンス文書にもとづき各州の当局等が判断している。

 2009〜2010年にはNORSを介して4,455件のアウトブレイクが報告された。このうち4,376件(98%)がAGEアウトブレイクで(2009年は1,883件、2010年は2,493件、表)、関連する患者数は122,488人、入院患者数は2,952人、死亡者数は168人であった。AGEアウトブレイクのうち単一の病因物質(確定または疑い)によるアウトブレイクは2,819件(64%)で、これらに関連する患者数は88,958人(73%)、入院患者数は2,381人(81%)、死亡者数は146人(87%)であった。単一の病因物質によるアウトブレイクの原因の第1位はノロウイルスで、アウトブレイク件数は1,908件(68%)、関連する患者数は69,145人(78%)、入院患者数は1,093人(46%)、死亡者数は125人(86%)であった。ノロウイルスに次いで最も多く報告された病因物質はサルモネラ属菌、赤痢菌および志賀毒素産生性大腸菌(STEC)で、それぞれ355件(13%)、109件(4%)、101件(4%)のアウトブレイクの原因であった。サルモネラ属菌はアウトブレイク関連の入院患者数が2番目に多かった病因物質で(773人、32%)、STECはアウトブレイク関連の死亡者数が2番目に多かった病因物質であった(9人、6%)。

 AGEアウトブレイクは、ワシントンDC、プエルトリコ、およびデラウェア州を除く全米各州から報告された。報告地ごとのアウトブレイク報告件数の中央値は42件(範囲は2〜331件)で、人口100万人・年あたりのアウトブレイク報告件数の中央値は7.3件(範囲は0.9〜44.8件)であった。全体としてAGEアウトブレイクは冬季に多く、4,376件のうち2,972件(68%)が11月〜4月に発生していた。これは、主に、ノロウイルスによるアウトブレイクおよび病因物質が不明のアウトブレイクの季節性の反映であった。ノロウイルスによるアウトブレイク1,908件のうち1,530件(80%)、病因物質が不明のアウトブレイク1,524件のうち1,086件(71%)が11月〜4月に発生していた。一方、ノロウイルス以外の病因物質(主に細菌)によるアウトブレイクではその62%が5月〜10月に発生していた。

 AGEアウトブレイクにおいて最も多く報告された感染経路はヒト−ヒト感染(2,271件、52%)で、次いで食品由来(1,513件、35%)、水由来(65件、2%)、動物との接触(44件、1%)および環境汚染(9件、0.2%)であった。474件(10%)では感染経路が不明であった。ヒト−ヒト感染が大部分のアウトブレイクの感染経路であったのはノロウイルス(1,261件、66%)と赤痢菌(86件、79%)の場合で、食品由来感染が大部分のアウトブレイクの感染経路であったのはサルモネラ属菌(254件、72%)とSTEC(64件、63%)の場合であった。単一の暴露の場所が報告されたAGEアウトブレイク3,052件(70%)では、介護施設などの医療関連施設が最も多く報告され(1,499件、49%)、次いでレストラン/宴会場(657件、22%)、学校/保育施設(290件、10%)、一般家庭(227件、7%)であった。ノロウイルスアウトブレイクの64%は医療関連施設で、赤痢アウトブレイクの74%は学校/保育施設で発生した。一般家庭およびレストラン/宴会場は、サルモネラ属菌(それぞれ32%、36%)およびSTEC(それぞれ46%、20%)によるアウトブレイクで最も多く報告された暴露の場所であった。

表:病因物質別の急性胃腸炎アウトブレイク件数およびアウトブレイク関連の患者数・入院患者数・死亡者数(米国NORS、2009〜2010年)


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部