欧州疾病予防管理センター(ECDC)からのノロウイルス関連情報
http://www.ecdc.europa.eu/


気候変動が欧州連合(EU)域内の食品・水由来疾患に及ぼす潜在的影響
Climate change: potential impacts on food- and waterborne diseases in the EU
28 Mar 2012
http://ecdc.europa.eu/en/press/news/Lists/News/ECDC_DispForm.aspx?List=32e43ee8%2De230%2D4424%2Da783%2D85742124029a&ID=593&RootFolder=%2Fen%2Fpress%2Fnews%2FLists%2FNews

http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/1203-TER-Potential-impacts-climate-change-food-water-borne-diseases.pdf(報告書PDF)

(食品安全情報2012年8号(2012/04/18)収載)

 欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、「気候変動により欧州の食品・水由来疾患が受ける潜在的影響の評価(Assessing the potential impacts of climate change on food- and waterborne diseases in Europe)」というタイトルの報告書を発行した。その概要の一部を紹介する。

 欧州の気候の変動は、欧州の環境や生態系だけでなく人間の健康と福祉にも影響を及ぼすと考えられる。食品および水由来(FWB:food- and waterborne)病原体は気象条件に特に敏感であることが知られており、公衆衛生上の施策立案や態勢整備には、気候変動がFWB疾患の流行に及ぼす影響に関する情報が不可欠である。

 本報告書には、カンピロバクター属菌、クリプトスポリジウム属虫、リステリア属菌、ノロウイルス、サルモネラ属菌および非コレラ性ビブリオ属菌の計6種類のFWB病原体と気象・気候との関連について、関連文献の包括的なレビューから得られた知見が記載されている。本報告書の主な目的は、気候変動がFWB疾患のEUでの流行に及ぼす潜在的な影響を評価・把握することである。

 741報の査読付き原著論文、各種報告書およびその他の科学的文献のデータなどを用いてリレーショナルデータベース(relational database)が作成された。またこれらのデータソースから、調査対象のFWB病原体と様々な気候変量とを関連付ける1,653件の重要事項(key fact)が特定された。調査対象の病原体に最も一般的に関連していた気候変量は、水温、季節性、気温、大雨発生回数、降水量および気温変化であった。気温との関連の報告の頻度が最も高かったのはカンピロバクター症およびサルモネラ症で、水温との関連はカンピロバクター症と非コレラ性ビブリオ感染で報告されていた。また、降水量との関連の報告の頻度が最も高かったのはクリプトスポリジウム症、次いでカンピロバクター症で、大雨発生回数との関連はクリプトスポリジウム症、次いで非コレラ性ビブリオ感染でみられた。

 欧州で最も有病率の高いFWB疾患はカンピロバクター症であるが、この疾患には季節性と数種の気候変量および特定の気象との強い関連が認められ、将来、気候変動により発生のピークの時期がずれる可能性がある。気温はまたサルモネラ症や食中毒の届出数にも顕著な影響を及ぼしており、これは食品の不適切な保存や喫食時の取扱い方法の不備が原因であると考えられる。しかし、公衆衛生対策の奏功もあって、サルモネラ症の罹患率は過去10年間、欧州全域で低下している。したがって、健康増進および食品安全の施策をきめ細かく実施することで、気候変動が公衆衛生にもたらす悪影響に対抗できるはずである。クリプトスポリジウム症の流行における地表水、水道水および大雨の役割を調べた多くの研究が存在する。気候区分により程度の差はあるが、異常な降雨はクリプトスポリジウム症アウトブレイクの件数を増加させると考えられる。リステリア属菌は気温の閾値や異常降雨と関連づけることができなかった。データ不足であるが、気候変動がリステリア症の罹患率に直接影響を及ぼす可能性は低いといえる。しかし、間接的な経路を介して患者数が増加する可能性はある。気候変量とノロウイルスの関連については公表された情報が比較的少ないことが一因となり、明確には示されていない。このため、気温の極値または閾値、および暴風雨、干ばつ、降雨などの事後効果に関するデータは得られていない。これに対し、夏季の気温(水温)上昇および夏季期間の長期化と非コレラ性ビブリオ属菌感染との間の強い関連の存在のエビデンスが報告されている。ただし現在は罹患率が低いため、疾患の実被害はそれほど増加しないと見積もられている。しかし、今後は感染患者の絶対数が増加すると推定される。具体的には、バルト海では水温などの環境条件の微小な変化によりビブリオ属菌の菌数が増加すると考えられる。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部