英国食品基準庁(UK FSA)からのノロウイルス関連情報
http://www.food.gov.uk/


英国における胃腸疾患による就労時間損失は1,100万日と推定される
Upset stomachs cost UK 11 million working days
6 September 2011
http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2011/sep/iid2

(食品安全情報2011年20号(2011/10/05)収載)

 英国食品基準庁(UK FSA)は、感染性胃腸疾患(IID:infectious intestinal disease)に関してこの10年間で最大規模の新しい調査の結果を発表した。重要な知見は以下の通りである。

・ IID患者は年間に最多で1,700万人発生しており、これは年間の全疾患患者の4人に1人に相当する。
・ IID患者の約50%は、IIDによる症状が原因で労働または学業を休んでいる。マンチェスター大学による推定では、これらは約1,900万日の損失に相当し、このうち1,100万日以上が生産年齢の患者によるものである。
・ 全国サーベイランスに報告されたIID患者1人につき147人の未報告患者が存在する。
・ IIDの病原体として最も一般的なものは、ノロウイルスなどのウイルスやカンピロバクターである。

 ノロウイルスは、英国のIIDの最大の原因であることが明らかになった。ノロウイルス感染症の多くはヒト−ヒト感染によって伝播するが、食品由来疾患の原因となり、FSAの食品由来疾患戦略である「Foodborne Disease Strategy 2010 ? 2015」にも含まれている。

 本調査では、カンピロバクターが英国の細菌性IIDの主要な原因であることも明らかになっており、英国の生の家禽肉での高い検出率を低減させる必要性が強調されている。カンピロバクター症は、英国で毎年50万人の患者の原因となっていると推定されている。カンピロバクター菌は主に生の家禽肉から検出され、最近のFSAの調査によると、英国内で市販されている鶏肉検体の3分の2が汚染されていた。

 1990年代半ばにイングランドで実施した同様の調査の結果と比較すると、現在は医師の診察を受ける患者が減少しているにもかかわらず、イングランドのIID罹患率は43%上昇している。その他の調査から判断すると、IIDのほとんどは食品由来でない可能性が高い。

 今回の新しい調査結果は、IIDが英国民に及ぼす影響をより正確に把握できるものとして非常に重要であり、FSAが戦略プランにおいてカンピロバクターを主要な優先事項としたことの正当性が示された。英国の鶏肉のカンピロバクター汚染レベルが極めて高いことが明らかであるため、FSAは食品業界と緊密に協力して汚染レベルの低減をはかっている。また、IIDの最大要因の1つと特定されたノロウイルスについても、FSAは研究資金を提供している。

 今回の調査から、英国内のIIDによる実被害が非常に大きいことが裏付けられた。しかし、報告疾患の大部分は基本的な衛生管理により予防可能である。食品調理および取扱いに関するFSAの助言は、食品に関連した細菌やウイルスによるリスクを最小限に抑えるのに役立つであろう。この調査は、何人が生活の被害を受け、公共医療サービスや広範な経済活動にどのような影響が出ているかを明確に示している。公衆衛生政策に関しては、引き続き個人の衛生および食品衛生管理を促進することで下痢・嘔吐を防ぐべきであるという方向性も裏づけられた。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部