欧州食品安全機関(EFSA)からのノロウイルス関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


食品由来ウイルスに関する情報の更新版を発表
EFSA provides up-to-date information on food-borne viruses
14 July 2011
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/110714.htm

(食品安全情報2011年15号(2011/07/27)収載)

 食品由来ウイルスは、EU内の食品由来疾患アウトブレイクの病因物質としてはサルモネラ菌に次いで2番目に多い。欧州食品安全機関(EFSA)は、このようなウイルスに関する最新の科学的知見について検討した“科学的意見(Scientific Opinion)”を発表し、EUにおけるウイルスの管理および拡散防止策について助言を提供している。この中で、ウイルス感染症の低減対策としては、汚染した食品からのウイルス除去より汚染防止に重点を置くべきであると推奨している。

 食品由来疾患アウトブレイクの重要な原因として、ウイルスはますます重視されてきている。2009年にEUで発生した食品由来全アウトブレイクのうちウイルスが原因だったものは19%を占め、1,000件以上のアウトブレイクで8,700人以上の患者が発生した。2007年以降、ウイルスによるアウトブレイクの件数は増加している。食品はウイルスがヒトに伝播する際の媒体であり、場合によっては強い伝染性を示して広範囲のアウトブレイクを生じることがある。

 EFSAの科学的意見では、生鮮農産物、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品および二枚貝(カキ、ムール貝、ホタテガイなど)におけるノロウイルスおよびA型肝炎ウイルスを対象とした。WHOはこれらを優先的に検討すべきハザードと位置付けている。E型肝炎ウイルスはEU内ではヒトの臨床患者はまれであるが、欧州のブタにおける汚染率が高く、食品を介して伝播するエビデンスがあるため、E型肝炎ウイルスも対象とした。

 EFSAのBIOHAZパネル(生物学的ハザードに関する科学パネル)は、ウイルス拡散防止対策としては、汚染食品からのウイルスの除去や不活化よりも、全ての生産段階における汚染防止に重点を置く方が効果的であるとした。汚染された二枚貝や生鮮農産物中のノロウイルスまたはA型肝炎ウイルスを除去もしくは不活化するには、完全に火を通すことが唯一の有効な手段である。食肉やレバーについても、汚染の可能性があるE型肝炎ウイルスを除去または不活化するには、完全に火を通す必要がある。

 本意見には、EUの食品由来ウイルスの拡散防止対策や今後のデータ収集に関して推奨事項が示されている。低減対策に関する推奨事項には、二枚貝のノロウイルスについて「喫食前に加熱が必要」と表示されていない場合には微生物学的基準を導入すること、食品取扱者に対して食品や環境のウイルス汚染に関する更なる指導を行うことが含まれている。E型肝炎ウイルスの感染予防については、肝疾患患者、免疫機能が低下している患者および妊婦は加熱が不十分なイノシシやブタの食肉やレバーを喫食しないよう推奨している。

(報告書)
Scientific Opinion on an update on the present knowledge on the occurrence and control of foodborne viruses
Published: 14 July 2011, Adopted: 26 May 2011
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2190.htm
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/doc/2190.pdf(報告書PDF)


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部