英国健康保護庁(UK HPA)からのノロウイルス関連情報
http://www.hpa.org.uk/


2009年における食品由来アウトブレイク報告数の増加
Campylobacter now the leading cause of general foodborne outbreaks in England and Wales
Health Protection Report, Volume 5 Number 19
13 May 2011
http://www.hpa.org.uk/hpr/archives/2011/news1911.htm#efoss

(食品安全情報2010年12号(2010/06/02)収載)

 英国健康保護庁(UK HPA)は、1992年以降イングランドおよびウェールズにおいて、感染性胃腸疾患(食品由来およびその他由来)の一般アウトブレイク を対象としたサーベイランスシステム(GSURV)を運営してきた。これとは独立したサーベイランスシステムとして、2009年に「食品由来およびその他由来の胃腸炎アウトブレイクのHPA電子サーベイランスシステム(eFOSS:HPA electronic Foodborne and non-foodborne gastrointestinal Outbreak Surveillance System)」が稼働を開始した。

 2009年はeFOSSに92件の食品由来アウトブレイクが報告され、2001年以降で最多の報告数となった。総患者数は3,410人で、このうち1,090人の感染が検査機関で確認され、109人が入院、8人が死亡した。食品由来アウトブレイクの主な報告地域はロンドン(19件)で、イーストミッドランド(East Midlands)地域(3件)からの報告が最も少なく、全国的なアウトブレイクは4件報告された。2009年に報告されたアウトブレイクの病因物質としては、サルモネラおよびノロウイルスが最も多く(それぞれ28/92、30%および17/92、18%)、カンピロバクターがそれに続いた(13/92、14%)(表1)。

表1:2009年にeFOSSに報告された食品由来アウトブレイク(病因物質別)

 食品由来アウトブレイクの発生場所としては、食品提供施設が最も多く(73/92、79%)、次いで公共福祉・居住施設(9/92、10%)、小売施設(6/92、7%)およびその他の場所(一般家庭、コミュニティ施設など)(3/92、3%)であった。食品提供施設に関連したアウトブレイクのうち、約2/3(47件、64%)がレストランおよび持ち帰り料理店で発生しており、多くは中国料理(12/47、26%)、多国籍料理(8/47、17%)およびインド料理(6/47、13%)の店であった。病因物質別では、サルモネラ、ノロウイルスおよびカンピロバクターによるアウトブレイクのそれぞれ82%(23/28)、88%(14/17)および84%(11/13)が食品提供施設に関連していた。大腸菌O157(VTEC O157)アウトブレイクも主に食品提供施設(3/7、43%)および小売施設(2/7、29%)に関連していた。

 原因食品が特定されたアウトブレイクは全体の76%(70/92)であった。最も高頻度に特定されたのは家禽肉で(22/92、24%)、次いで複合/混合食品(14/92、15%)、甲殻類・貝類(12/92、13%)であった(表2)。2009年のアウトブレイクで最も多く原因と特定された個別の食品は、カキ(12/92、13%)および家禽のレバーパテ(9/92、10%)であった。サルモネラアウトブレイクでは、家禽肉(26%)、複合/混合食品(23%)および卵(17%)が最も多く関連していた。ノロウイルスアウトブレイク17件のうち12件(70%)がカキ(甲殻類・貝類のカテゴリー)の喫食に関連し、カンピロバクターアウトブレイクの原因食品の90%が家禽肉であった。VTEC O157アウトブレイクでは赤身肉が原因食品であることが最も多く(57%)、その他の病因物質による魚(Finfish)(具体的にはすべてマグロ)を原因食品としたアウトブレイク(表2)では、そのすべてがscombrotoxin1)によるものであった。92件のアウトブレイクのうち、1%(1/92)が分析疫学的および微生物学的エビデンスにより、24%(22/92)が微生物学的エビデンスのみにより、11%(10/92)が分析疫学的エビデンスのみにより、また40%(37/92)が記述疫学的エビデンスのみにより原因食品が特定された。

表2:2009年に発生した食品由来アウトブレイクにおける病因物質ごとの原因食品

 食品由来アウトブレイクの77%(71/92)で寄与因子が報告された。最も報告が多かった寄与因子は交差汚染(29%、28/98)で、続いて不十分な加熱/調理(22%、22/98)、不適切な保存方法(高温、長期間)(17%、16/92)、病原体に感染した食品取扱者(10%、10/98)、手洗い設備の不備(9%、9/98)、個人の不適切な衛生習慣(7%、8/98)および不十分な冷却(4%、4/98)であった。サルモネラアウトブレイクの寄与因子としては、交差汚染および原因食品の不十分な加熱が最も多く(それぞれ39%および24%)、カンピロバクターアウトブレイク(両者とも46%)およびVTEC O157アウトブレイク(それぞれ29%および43%)でも同様であった。ノロウイルスアウトブレイクで報告された主な寄与因子は病原体に感染した食品取扱者(57%)などであった。

 ほぼ20年間にわたりイングランドおよびウェールズから収集された包括的な食品由来アウトブレイクデータの存在により、食品由来疾患の動向をそれに対してとられた対策との対比において追跡することが可能となった。またこのデータは食品由来疾患の感染源の解明のための有用な情報源となっている。情報伝達およびデータ収集を促進する対策が実施されたことで、2009年の食品由来一般アウトブレイクの年間報告数は前年より増加し92 件となった(図)。2009年の個々の病原体によるアウトブレイクの報告数は検査機関で確認されたそれぞれの患者数の増加を反映していたが、興味深いことにサルモネラは例外で、アウトブレイク報告数は増加したが報告患者数は減少していた。2009年に報告されたサルモネラアウトブレイクの半数以上(61%、17/28)は、スペインの認可施設から輸入され、食品提供施設で使用された殻付き生卵に関連したSalmonella Enteritidis PT (Pharge Type) 14bによるものであった。

図:主要な病因物質による食品由来一般アウトブレイクの1992〜2009年における報告件数の変化


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部