Eurosurveillanceのノロウイルス関連情報
http://www.eurosurveillance.org/


2010年1月にデンマークで発生したレタスに関連した一連の胃腸疾患アウトブレイク
Outbreaks of gastroenteritis linked to lettuce, Denmark, January 2010
Volume 15, Issue 6, 11 February 2010
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19484

(食品安全情報2010年5号(2010/02/24)収載)

 2010年1月中旬、デンマークで少なくとも11件の相互に関連した胃腸疾患アウトブレイク(患者数合計260人)が発生した。病因物質は複数の遺伝子型のノロウイルスおよび腸毒素原性大腸菌であり、原因食品はフランス産のレタス(lollo bionda種)であることが判明した。

 2010年1月第3週にデンマーク東部地域を担当する食品管理当局に胃腸疾患アウトブレイク5件が報告され、第4週にそれらの分析からアウトブレイクとレタスとの関連が明らかになった。2月8日時点で関連するアウトブレイクは11件になり、さらに現在調査中のアウトブレイク8件もレタスが原因食品であると考えられている。11件のアウトブレイクで原因食品に暴露した可能性のある者は約480人、胃腸疾患症状を呈した者は約260人であった。11件はすべて同国の東側半分(フユン(Funen)島およびシュラン(Zealand)島)で発生した。当初はノロウイルスが疑われたが、すべてのアウトブレイクでカプラン基準が満たされたわけではなく、また発症率がノロウイルスにしては高すぎる場合もあったため、病因物質は複数であると考えられた。

 アウトブレイクはすべてがケータリング業者のランチを喫食した集団(会社従業員、講習参加者など)で発生し、ランチにはサンドイッチまたはオープンサンドイッチが含まれていた。材料リストによると、原因食品としての可能性がある唯一の共通食品はサンドイッチにしばしば使用されるレタスであった。当該ケータリング業者が使用したレタスはすべてlollo bionda種で、追跡調査により特定の納入業者2社のいずれかのレタスであったことがわかった。この2社はレタスを同じ卸売業者から購入していた。卸売業者は、フランス南西部の屋外で栽培されるlollo biondaレタスを買い付けていた。

 一部のアウトブレイクで質問票による調査が行われ、レタスを含むサンドイッチの喫食と発症との間に関連が認められた。比較的人数の多い1つの集団で後向きコホート研究が行われた。食品8品目に関する質問票を60人に配布し、44人が回答した。34人が発症していた。レタスを含む3種類のサンドイッチの喫食のリスク比(RR)は6.2であった(95%信頼区間:1.0〜38)。

 一連のアウトブレイクの患者から腸毒素原性大腸菌(ETEC)が検出されたが(下記参照)、同菌は11件のアウトブレイクの患者以外の者からも検出された。聞き取り調査により、これらの患者はデンマーク国内で感染したことがわかった(デンマークのETEC感染のほとんどは外国旅行関連と考えられている)。発症日は2010年1月14日から21日であった。予備的な聞き取り調査から、これらの患者もケータリング業者が製造したサンドイッチの喫食により感染したと考えられた。11件のアウトブレイクに追加される可能性のあるこれらのアウトブレイクについては現在調査中である。これらの結果から、今回の一連のアウトブレイクは小売りのレタスではなく、卸売り段階のレタスによるものであったと考えられる。

 当該ケータリング業者2社からレタスが回収され、デンマーク国立食品研究所がノロウイルスの検査を行った。1月22日、1件のアウトブレイクに関連したレタスから遺伝子型グループ(genogroup) IIのノロウイルスが検出された。大腸菌の検査結果は陰性であった。

 これまでにStatens Serum Institute(SSI)は、アウトブレイク患者25人の検便検体のウイルス検査を行った。このうち23検体が陽性であり、2人が遺伝子型グループ I、12人が同II、および9人がこれら2グループ両方のノロウイルスに感染していた。塩基配列解析の結果は、少なくとも3種類の遺伝子型のノロウイルスが検便検体に存在することを示した。他のウイルスの検査結果はまだ出ていないが、患者2人の検体からサポウイルスが検出された。

 SSIが同じ検体で行った病原細菌(サルモネラ、カンピロバクター、赤痢菌およびエルシニア)の検査では結果は陰性であったが、下痢原性大腸菌の検査では24人のうち11人の患者の検体からETECが検出された。血清型はO6:K15:H16でLTおよびSTh毒素の遺伝子を保持していた。これら以外に、1月にSSIが行った通常の検便検査により、別にETEC感染患者16人(通常よりかなり多い)が見つかった。このうち15人の株の血清型はO6:K15:H16であった。アウトブレイク患者24人の検体からは、黄色ブドウ球菌(2人)、ウェルシュ菌(3人)、およびセレウス菌(2人)も検出された。

 関連するすべてのアウトブレイクで同じ納入業者からの同じ種類のレタスが見つかったことから、1月22日、Danish Veterinary and Food Administration の指示により、2010年1月1日以降に当該納入業者が販売したレタスのデンマーク市場からの回収が開始された。レタスにおけるノロウイルスの存在がウイルス学的に確認されたため、1月25日に緊急警報が発せられた。追跡調査によると、当該バッチは少量が小売りで販売されたが、ほとんどがケータリング業者やレストランに販売されていた。

 欧州疾病予防管理センター(ECDC)の食品および水由来疾患ネットワークを介して、ノロウイルス感染アウトブレイク(1月26日)とETECの検出(1月28日)に関する2回の情報提供緊急要請が行なわれ、それに続いて、ノロウイルスに関するネットワーク(旧DIVINE-NET:ウイルス性腸内感染症の予防のためのネットワーク)を介して情報提供が行なわれた。その結果、ノルウェーがlollo biondaレタスによるアウトブレイク3件の発生を報告した。デンマークで原因食品となった2バッチのレタスの一部がノルウェーに輸出され、これがノルウェーのアウトブレイクの原因食品となったと考えられる。現在判明している限りでは、デンマークとノルウェー以外の国からは、このレタスによるアウトブレイクは報告されていない。フランス当局が汚染の原因を調査中である。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部