世界保健機関(WHO)からのノロウイルス関連情報
http://www.who.int/en/


食品中のウイルス: リスク管理への科学的助言/微生物リスクアセスメント(Microbiological Risk Assessment: MRA)シリーズ13
Viruses in food: scientific advice to support risk management activities, MRA Series 13
11 December 2008
http://www.who.int/foodsafety/publications/micro/mra13/en/index.html
http://www.who.int/foodsafety/publications/micro/Viruses_in_food_MRA.pdf(PDF)

(食品安全情報2008年26号(2008/12/17)収載)

 「食品中のウイルス:リスク管理への科学的助言(微生物リスクアセスメントシリーズ13)」が発表された。その要約部分を紹介する。

 2007年5月にFAOとWHOにより開催された専門家会議では、感染性胃腸疾患の実被害においてウイルスが重要な原因の一つであるという結論が下された。しかし、未報告事例、サーベイランスシステムが存在しないこと、現行システムでは食品由来による感染の割合を把握できないことなどから、ウイルス性疾患のうち食品由来であるものの割合の推定は困難であるとした。会議では公衆衛生にとって懸念すべきウイルスと食品の組み合わせの優先順位を、疾患の重症度、発生率/有病率、暴露の可能性、貿易への影響、公衆衛生費用および感染の制圧の実現性という規準によって検討した。その結果、最も優先順位の高い組み合わせは、貝類、生鮮農産物および調理済み食品におけるノロウイルスおよびA型肝炎ウイルスであるという結論になった。このような優先順位のリストは現在の知見にもとづいていて不完全なものであると考えられるが、流行の鎮静化や予防の戦略の決定には重要な情報である。

 食品由来ウイルスの性状がリスク管理者に新しい問題を提起している。ウイルスと一般的な食品由来細菌とは、形態、感染性、持続性および疫学が明確に異なっており、ウイルス制圧には細菌の場合と異なる対策を必要とする場合が多い。このため、細菌感染の防止に最適化されている現行の食品衛生ガイドラインはウイルス感染には有効ではない可能性がある。また、ウイルスの感染源が共通である場合が多いため、1種のウイルスの制圧対策が他のウイルスの制圧に役立つことがある。

 ウイルス検出法が進歩し、汚染食品中の腸内ウイルスの検出法が確立され、多くの国で使用されている。しかし、その手法は統一されていない。検出手法の統一化の動きはあるが、主に二枚貝中のウイルスの検出に重点が置かれているため、生鮮農産物や調理済み食品など他の食品のための取り組みも必要である。

 会議では食品のウイルス汚染の3大経路が、1)下水と人間の便、2)感染している食品取り扱い者、3)人獣共通感染ウイルスに感染し得る動物であるとされた。しかし、大規模なアウトブレイクは複数の伝播経路によることが多い。このため、防止対策はウイルスと食品の重要な組み合わせに重点を置くべきであるとされた。可能である地域ではこれらの組み合わせを個々の規準を用いて見直し、新しい情報やデータが得られた際には改正していくべきであるとした。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部