アイルランド疾病サーベイランスセンター(National Disease Surveillance Center, Ireland), EPI-Insightからのノロウイルス関連情報
http://www.ndsc.ie/hpsc/
http://www.ndsc.ie/hpsc/EPI-Insight/


2007年のアイルランドのロタウイルス
Rotavirus in Ireland, 2007
EPI-Insight, Disease Surveillance Report of HPSC, Ireland
Volume 9, Issue 10, October 2008
http://www.ndsc.ie/hpsc/EPI-Insight/Volume92008/File,3183,en.pdf

(食品安全情報2008年4号(2008/02/13)収載)

 アイルランドでは、2004年1月に急性感染性胃腸炎(AIG: Acute Infectious Gastroenteritis)が届出義務疾患となり、ロタウイルス、Clostridium difficileの感染患者および特定できない胃腸炎疾患がその対象になった。2004年以前は、検査機関における2歳未満の小児の胃腸炎患者のデータのなかにロタウイルスのデータが含まれていた。CIDRシステムに2004年1月1日から2007年12月31日に届け出られたAIG患者全員のデータを、2008年9月10日に抽出し、解析を行った。

 2007年はAIG患者2,520人の届け出があり、このうち2,326人(92%)からロタウイルスが検出された。粗発生率(CIR : Crude Incidence Rate)は100,000人あたり54.9人で、2006年の100,000人当たり50.0人から上昇し、届け出義務となって以来の最高値となった。2004年〜2007年に報告された患者は8,289人で1年当たりの平均は2,072人であった。過去と同様、患者数は地域によって様々であり、図1は2006年〜2007年の地域毎のCIRを示している。保健サービス局(HSE: Health Service Executive)の地域のうち上昇率が最も高かったのは、22.3%上昇したHSE-M(中央: Midlands)、28.6%上昇したHSE-SE(南東: South-East)、36.9%上昇したHSE-W(西: West)であった。

 同国のロタウイルス感染には季節パターンがみられ、毎年早春がピークである。しかし、2007年は異なり、第12週目まで例年のような患者急増が起きず、通常より4週間遅くピークがあり、患者が多い期間が例年より1ヶ月長く続いた。患者の増加時期の遅れは米国およびドイツなど他国でもみられた。図は2004年〜2007年の週毎の届け出患者数のデータである(2005年は第33週にピークがあるが、これはHSE-W地域の届け出を大量にアップロードしたことに起因する「誤ったピーク」である)。

図:2004年〜2007年の週毎の届け出患者数のデータ、2004〜2007年(CIDR)

 ロタウイルス感染患者は主に2〜3歳までの小児である。表は2007年の年齢層別の患者数と発生率である。例年同様、発症率が最も高かったのは6〜24カ月齢で、患者の大部分(n=1,780)は2歳以下の小児であった。近年、0〜4歳の患者が増加しており、2006年のCIRは100,000人当たり676.6人だったが、2007年は100,000人当たり746.1人に増加した。男性患者は1,186人(51%)、女性は1,116人(48%)、不明が1%であった。男女比は1.06 : 1であり、例年通りであった。

表:年齢層別のロタウイルスによる患者数と発生率、アイルランド、2007年

 2007年はロタウイルス感染アウトブレイクが7件、ノロウイルス/ロタウイルス混合感染アウトブレイクが1件発生し、これら8件による患者数は合計47人であった。最大のものは保育所で患者17人が発生した混合感染アウトブレイクで、ヒト−ヒト感染により拡散した。2番目は病院で患者10人が感染したもので、これもヒト−ヒト感染によって拡散した。2004年〜2006年に発生したアウトブレイクは5件で、患者は33人であった。

 1998年に米国で2、 4および6カ月齢の小児にルーチンとして4価ロタウイルスワクチンRotashieldRを接種することが推奨された。このワクチンには80%以上の有効性が認められたが、導入して12カ月以内に腸重積症との関連性を示す証拠が認められたため、使用が中止された。その後、RotaRixR(乳児の胃腸炎患者の分離株から製造された経口生ワクチン)およびRotaTeqR(ヒトおよびウシの親株から製造された5価遺伝子再集合ロタウイルス経口生ワクチン)の臨床試験が行われている。両ワクチンは安全で有効と考えられているが、高価である。欧州疾病予防管理センターは、有効性および安全性、費用便益および公衆衛生の観点からこのワクチンを検討しており、評価結果を本年中に加盟国に発表する予定である。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部