米国疾病対策センター(US CDC: Centers for Disease Control)からのノロウイルス関連情報
http://www.cdc.gov/


ノロウイルス被害実態−米国、2006〜2007年
Norovirus Activity --- United States, 2006--2007
Morbidity and Mortality Weekly Report, August 24, 2007 / 56(33);842-846
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5633a2.htm

(食品安全情報2007年16号(2007/08/01)収載)

 米国疾病予防管理センター(US CDC:Centers for Disease Control and Prevention)は、2006年後半多くの州の公衆衛生部から、急性胃腸炎(AGE:acute gastroenteritis)、特に長期療養施設内でのヒト−ヒト感染のアウトブレイク発生増加に関する情報提供の要請を受けるようになった。米国にはノロウイルスなどによるAGEのアウトブレイクに関する国のサーベイランスシステムは存在せず、全国的なサーベイランスデータがないため、CDCは次の情報源からのデータを分析することにより、AGEのアウトブレイクの特性を解析した。

1) CDCへAGEのアウトブレイク増加の報告が予想される3州(ノースカロライナ、ウィスコンシン、ニューヨーク)で最近発生したアウトブレイクに関する詳細データ

2) マサチューセッツ州ボストンの救急部(ED: Emergency Department)からの症状サーベイランスデータ

3) 各州の保健衛生部門の調査から得られたAGEアウトブレイクに関するCDCの基礎疫学データ

4) CDC検査室からのデータ

 これらの情報の解析により、ノロウイルスによるAGEアウトブレイク(長期療養施設における死亡者を含む)の全国的な発生増加が示唆された。また、2006年に全米で突然現れ、同時に流行したGII.4型ノロウイルスの2種の新株が被害増加の原因となった可能性が高い。

 ヒト−ヒト感染によるアウトブレイクを含めた改訂したアウトブレイク全国サーベイランスと、容易にアクセスでき安価でタイムリーに受けられる臨床検査、およびCDCのノロウイルス株シークエンスデータベースの利用によって、ノロウイルス関連の罹患率および死亡率のより正確な評価が可能となり、ノロウイルス新株の同定がより迅速に行われるようになると考えられる。

 CDCは全50州およびコロンビア特別区の衛生部に情報提供を求め、2005年と2006年に5件以上のアウトブレイク発生報告があった24州のデータをレビューした。2005年の10〜12月と2006年の同期のアウトブレイク発生数を比較したところ、22州(92%)で増加(増加率:18%〜800%)が報告された。この24州の2005年の10〜12月のアウトブレイクの合計は372件であるのに対し、2006年同期は1,316件であった。

 また、CDCの国立カリシウイルス研究所(National Calicivirus Laboratory at CDC)が2006年に実施した、米国で発生したAGEアウトブレイク126件の検便検体761検体のRT-PCR法による検査では、114件(90%)でノロウイルスが確認され、87件(76%)が新種のGII.4変異株(MinervaおよびLaurens)によるものであった。2006年10月〜12月にクルーズ船と8つの州で発生した25件のアウトブレイクのうちMinerva株は15件(60%)で、Laurens株は10件(40%)で検出された。また2007年1月〜6月の間にクルーズ船および19の州で発生した122件のアウトブレイクのうち、Minerva株は66件(54%)、Laurens株は33件(27%)で検出された。Minerva株とLaurens株の部分カプシドシークエンスは、2006年にヨーロッパで報告されたGII.4株(GII.4 2006a、GII.4 2006b)と一致していた。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部