(食品安全情報(微生物)2013年12号(2013/06/12)収載)
欧州でA型肝炎アウトブレイクが数件報告されており、調査が行われている。
アウトブレイク1
ドイツ、ポーランドおよびオランダが、イタリア北部から帰国した旅行者にA型肝炎アウトブレイクが発生していることをヨーロッパ早期警告・対応システム(EWRS)を介して報告した。また、イタリア北部の地域当局も2013年にイタリア北部および全国でA型肝炎患者が増加していることを報告した。
アウトブレイク2
2012年10月1日〜2013年5月23日に、デンマーク、フィンランド、ノルウェーおよびスウェーデンが、相互に関連する2種類の塩基配列のいずれかを示すA型肝炎ウイルス1bの感染患者を報告した。いずれの患者にもウイルスに暴露した可能性のある期間に欧州連合(EU)域外への旅行歴はなかった。このアウトブレイクに関連した患者はこれまでに計89人が報告されており、このうち42人が確定患者である。感染源はまだ特定されていないが、北欧諸国での疫学調査で冷凍ベリーが示唆されている。
アウトブレイク3
2012年11月〜2013年5月に、EU加盟数カ国が、エジプト旅行から帰国後にA型肝炎を発症した患者を報告した。患者発生国のうち6カ国の患者20人から同じ塩基配列のA型肝炎ウイルスが検出された。感染源は未だ不明であるが、記述疫学によると、エジプトでの持続的な共通感染源の存在が考えられる。A型肝炎の流行地域への旅行者は、旅行開始前のA型肝炎ワクチン接種の重要性を再認識すべきである。
アイルランドでのA型肝炎の状況
ここ数年、アイルランドのA型肝炎の発生率は低レベルで、年間報告患者数は19〜50人、粗発生率は人口10万人当たり0.4〜1.1である。2013年は現在までに17人の患者が報告されており、これに対し2012年の同期間では14人であった。これらの患者と上記のアウトブレイクとの関連の有無を明らかにするため、強化サーベイランスおよび一部のウイルス株の塩基配列決定が行われている。