(食品安全情報2013年10号(2013/5/15)収載)
2012年11月1日から2013年4月30日にかけて、欧州連合/欧州自由貿易連合(EU/EFTA)加盟14カ国で、A型肝炎ウイルス(HAV)遺伝子型IBに感染した確定患者15人および高度疑い(probable)患者89人が報告された。患者全員にエジプトへの旅行歴があった。
3カ国の確定患者15人由来のHAVのRNA塩基配列が一致したことから、本事例は患者がエジプトでHAVに暴露した、複数国にわたるアウトブレイクであることが確認された。
患者発生国で行われた予備的疫学調査では感染源は特定されなかった。したがって、ワクチン接種を受けていないEU/EFTA加盟国の国民が、エジプト、特に紅海沿岸地域に旅行をする場合には、今後もHAVに暴露する可能性がある。患者発生国で新たな患者が、また、他の加盟国からも本アウトブレイクに関連する患者が報告される可能性がある。
表1:エジプト旅行歴のあるA型肝炎患者の確定状況別および報告国別の数(2012年11月1日〜2013年4月30日)
図1:各国のA型肝炎高度疑い患者および確定患者の発症週別の数*(2012年11月1日〜2013年4月30日、n=101**)
*発症日が不明の場合は検査日または報告日を使用
**104人の患者のうち3人に関しては正確な日付が不明
患者の発生時期には3つのピークがあり、2013年第3週から始まった第3のピークの患者が最も多かった。確定患者が報告されたのは第3のピークのみであった。1週間の患者数が最も多かったのは2013年第6週であった。この週には、確定患者を報告した3カ国すべてで同一のRNA塩基配列が確認された。
情報が得られた患者83人のうち47人(57%)が女性であり、確定患者では15人のうち10人(67%)が女性であった。情報が得られた患者83人の平均年齢は40歳、年齢範囲は4〜76歳で、確定患者では平均年齢は36歳、年齢範囲は4〜63歳であった。合計で11人が入院し、2人がHAV感染が原因で死亡した。
確定患者は、紅海沿岸にある2つの場所(Sharm-El-Sheikh、Hurghada)のいずれかへの旅行を報告した。滞在先に関する予備的調査では複数のホテルおよびリゾート施設が報告された。確定患者クラスターとして、Sharm-El-Sheikhで2クラスター(患者数5人および2人)、Hurghadaで1クラスター(3人)が特定された。利用した航空会社および空港は様々で、多くが直行便であった。
ワクチン接種について患者68人の情報が得られ、全員がワクチン接種を受けていなかった。