米国農務省農業研究局(USDA ARS)からのインフルエンザA(H1N1)関連情報


(プロジェクト4)一部の H1N1 ワクチンのブタにおける効力
Project 4: Efficacy of Selected H1N1 Vaccines in Pigs
Last Modified: 01/20/2010
(食品安全情報2010年3号(2010/01/27)収載)

 2009年にパンデミックH1N1インフルエンザA(A/H1N1)ウイルスが北米(メキシコ、米国、カナダ)のヒトで確認された。パンデミックA/H1N1ウイルスは、遺伝子の再集合(ウイルスの遺伝物質が混合して新たな組み合わせになる)と遺伝子の継続的変化(抗原連続変異)により、もとのユーラシア系統のブタインフルエンザウイルスとは異なる新しい株へと変化しており、米国のブタに定着する可能性もある。その結果、パンデミックウイルスは、今までのA/H1N1ウイルスによるものとは異なる、別の抗体の産生を誘導する。これは過去に暴露経験のないヒトやブタに対する脅威となる。ウイルスを制御し、将来の遺伝子再集合や新たなA/H1N1ウイルス株発生のリスクを低減させるために、ワクチン株選定システムの開発が極めて重要である。そこで以前の研究に引き続き、発症予防効果と免疫原性に関して、現在市販されている3種の多価ワクチン(複数株への適用あり)と、2009パンデミックA/H1N1ウイルスから試験的に製造した不活化一価ワクチン(experimental inactivated homologous vaccine)とを比較検討した。予想通り、すべての評価パラメータ(直腸温、発熱、ウイルス排出、肺炎)において、試験的に2009パンデミックウイルスから製造したワクチンが2009パンデミックA/H1N1ウイルス防御に最適であることが確認された。また、このワクチンが、2009パンデミックA/H1N1ウイルスに対する強力な特異抗体の産生を誘導した唯一のワクチンであった。検査した3種すべての市販ワクチンでは部分的な防御免疫が得られ、肺炎病変の軽減から肺および鼻におけるウイルス複製の抑制に至るまでその効果は様々であったが、いずれも鼻からのウイルス排出や臨床症状を全て抑制することはできなかった。不適合な不活化ウイルスワクチンにより時折見られる肺炎の増悪(aggravated pneumonia)は、いずれの市販ワクチンによっても発生しなかった。本研究の結果にもとづき、暴露歴のないすべての月齢のブタ群をワクチンによりパンデミックA/H1N1ウイルスから防御するためには、現在流行中のウイルス株に対してのみ防御免疫を提供する一価ワクチン(monovalent homologous vaccine)の開発が必要である。これにより、米国のブタ集団を保護し、ヒトからブタ、ブタからブタ、そして再びブタからヒトへとパンデミックA/H1N1ウイルスが伝播する危険性を低減することができる。

 詳細な報告書は以下のサイトから入手可能。
http://www.ars.usda.gov/2009H1N1/project4.pdf(Project 4)

http://www.ars.usda.gov/2009H1N1/


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部