国連食料農業機関(FAO)からのインフルエンザA(H1N1)関連情報


七面鳥からインフルエンザH1N1ウイルスを検出:感染拡大の可能性(2009年8月27日)
H1N1 flu in turkeys may spread
27 August 2009
(食品安全情報2009年19号(2009/9/9)収載)

 チリで七面鳥からインフルエンザH1N1ウイルスが検出され、現在ヒトの間で流行しているパンデミックH1N1ウイルスの感染が世界中の家禽農場で発生するのではないかという懸念が生じている。
 8月20日、チリ当局は、Valparaiso港近辺の2農場の七面鳥からパンデミックH1N1/2009ウイルスが検出されたと報告した。検出されたウイルスは、現在世界中のヒトの間で流行しているパンデミックH1N1/2009ウイルス株と同一の株である。
 しかし、今回の検出が即座にヒトの健康への脅威となるわけではなく、七面鳥の肉は動物衛生検査と衛生的な加工を経て引き続き販売することが可能である。
 国連食糧農業機関(FAO)暫定主任獣医師Lubroth氏は、チリ当局が迅速に国際機関に報告したこと、当該農場を一時的な検疫下に置いたこと、淘汰ではなく感染した七面鳥の健康回復を待つという決定をしたことなどの対応を科学的に適切であるとした。また、感染した鳥が回復すれば、引き続き安全な生産と加工が可能で、フードチェーンへの脅威はないとした。
 現在流行中のH1N1ウイルス株は、ヒト、ブタおよび鳥のインフルエンザウイルスの遺伝子が混合した株であり、伝染力は非常に強いものの、病原性は一般的な季節性インフルエンザウイルス程度である。しかし、理論的には、病原性は非常に強いがヒトの間では感染しにくい鳥インフルエンザH5N1ウイルスと組合わさった場合に病原性が強くなる可能性がある。このような遺伝子再集合または遺伝的組み換えは、宿主が複数のウイルスに同時感染した場合に起こる。
 Lubroth氏は、チリではH5N1インフルエンザは発生していないが、家禽のH5N1感染が大量に発生している東南アジアでは、家禽へのH1N1の侵入が大いに懸念されるとした。
 このため、FAOは、動物衛生の監視の強化を要請し、不健康な動物からの飼育従事者の保護、および具合の悪い飼育従事者を動物に近づけないことなどの衛生規範および飼育規範の遵守を奨励している。
 Lubroth氏は、特に発展途上国では動物の状態をより注意深く監視し、適切な診断能力や緊急事態に対応できる現場対応チームなどの獣医サービスを強化する必要があるとしている。
 インフルエンザ様症状を呈する農場従事者から動物へのH1N1/2009ウイルス感染事例は、これまでにカナダ、アルゼンチンおよびオーストラリアでブタへの感染が確認されており、今回のチリは4カ国目である。
http://www.fao.org/news/story/en/item/29532/icode/


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部