EurosurveillanceからのインフルエンザA(H1N1)関連情報


最近単離されたヒト感染豚インフルエンザA(H1N1)ウイルスの起源
Rapid communications
THE ORIGIN OF THE RECENT SWINE INFLUENZA A(H1N1) VIRUS INFECTING HUMANS
Eurosurveillance, Volume 14, Issue 17, 30 April 2009

 現在発生しているパンデミックの原因である新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスのゲノムの予備的解析により、このウイルスの全てのゲノム分節は、よく見られる豚インフルエンザウイルスのゲノム分節と最も関連性が高いことが示唆された。
 新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスがメキシコで確認され、世界中に急速に拡散した。世界保健機関(WHO)は各国機関および国際機関と協力し、このウイルスを封じ込めるための対策を評価、吟味し、そして実施している。このウイルスのいくつかの分離株のゲノム塩基配列の時宜を得た発表はその1つである。これにより、何千人もの科学者がこのウイルスの研究に参加することが可能となっている。
 この新型株の起源に関してはいくつかの疑問が生じている。インフルエンザAはゲノムとして8本の異なる分節を持つ単鎖RNAウイルスである。二つのウイルスが一つの細胞に同時感染すると、双方の親ウイルス株からの分節を持つ新たなウイルスが発生する可能性がある。
 公的データベースに収集されている塩基配列を利用することで、メキシコで確認された新型株と最も近縁なウイルス株を同定し、クラスターおよび系統樹を構築することができる。塩基配列の整列と類似性の検出、主要コンポーネント分析によるクラスター分析、および系統樹分析は全て同様の結果を導いた。
 予備的な分析結果から、この新型株はいくつかの豚インフルエンザウイルス株(場合によっては七面鳥インフルエンザウイルス株)に最も近縁であることがわかった。新型株の6本の分節は北米の豚インフルエンザウイルスと関連しており、他の2本の分節(NAおよびM)はユーラシアで分離された豚インフルエンザウイルスと関連がある。HA分節について分析した時に、NCBIデータベースに入力されている株の中で最も近縁なクラスターは北米の豚インフルエンザA(H1N2)およびH3N2であった。新型ウイルスのノイラミニダーゼ(NA)遺伝子と最も近縁であるのは1992年のインフルエンザA分離株であった。さらに多くのデータがアクセス可能になれば、この遺伝子の変遷が明らかになると思われる。
 北米の祖先ウイルスは複数のゲノム再集合(reassortment)ウイルス、すなわち北米で1998年以降に分離されたH1N2およびH3N2豚インフルエンザウイルスに関連していると考えられる。1998年に分離されたH3N2豚インフルエンザウイルス株はヒト、ブタ、鳥の3種のインフルエンザウイルスのゲノム再集合ウイルスであった。
 今回の予備的分析から、現在のH1N1ウイルスは、少なくとも2種の豚インフルエンザウイルスを祖先ウイルスとし、そのうちの1種は北米で1998年に分離された、3つのインフルエンザウイルスより生成したゲノム再集合ウイルスに関連していることが示唆された。現在までにこの新型ウイルス株はブタからの分離が報告されていないが、これがブタ群におけるサーベイランスが不十分なためなのか、ウイルスがつい最近起きたゲノム再集合により生じたためであるのかは不明である。
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19193


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部