欧州食品安全機関(EFSA)からのエボラウイルス疾患(EVD)に関する食品関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


アフリカの森林に生息する野生動物の肉を介したエボラウイルスの欧州への伝播について欧州食品安全機関(EFSA)がリスク評価を発表
EFSA assesses the risk of transmission of Ebola through bushmeat
4 November 2014
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/141104a.htm

(食品安全情報2014年23号(2014/11/12)収載)

 欧州食品安全機関(EFSA)は、アフリカの中部・西部から欧州に違法に輸入された野生動物の肉を介してエボラウイルスが侵入・伝播する可能性は低いとしている。

 エボラウイルスは、アフリカの森林に生息するオオコウモリ、ゴリラ、チンパンジー、ダイカー(duiker)などの野生動物(当該野生動物)の肉から検出されている。当該野生動物の肉の欧州連合(EU)域内への輸入は法律で認められていない。EU域内に違法に輸入された当該野生動物の肉の取扱い、調理および喫食によるエボラウイルスの感染事例は現時点では報告されていない。

 EFSAの専門家は、以下の理由により、当該野生動物の肉を介してエボラウイルスに感染するリスクは低いと結論付けた。まず、当該野生動物の狩猟および解体には高い感染リスクが伴うが、欧州ではこれらの慣行の存在が確認されていない。また、EU域内での当該野生動物の肉の喫食量は少ないと考えられる。さらに、アフリカでは当該野生動物の肉が日常的に喫食されているが、現地でのアウトブレイクの報告件数は比較的少ない。しかし、EFSAの専門家は、当該野生動物の肉を介したエボラウイルスの侵入・伝播の可能性は低いとしながらも、その高い致死率やヒト−ヒト感染が容易であることを考慮すると、侵入・伝播が現実となった場合の公衆衛生上の影響は重大なものになるであろうと警告している。

 専門家は、欧州で当該野生動物の肉を介したエボラウイルスの伝播を防ぐ最も効果的な対策は、その違法な輸入を完全に阻止することであると助言している。

 専門家は、今回のリスク評価において、いくつかの点に関し知見が不足していることを指摘している。例えば、EU域内での当該野生動物の肉の消費量や、違法に輸入された当該野生動物の肉の欧州内での取扱い・調理・喫食方法に関しては情報が全く存在しない。動物の肉や動物由来製品中でのエボラウイルスの生残期間については、科学的な解明が行われていない。

 このように未解明な点はいくつかあるが、EFSAの専門家は、エボラウイルスが死滅せずに欧州に輸送される可能性は、短時間で輸送された生鮮または冷凍肉で高く、輸送中に比較的高い温度に曝された乾燥・燻製肉で低いと結論付けた。さらに、十分な加熱(100°C)によりウイルスは死滅するとも述べている。

 EFSAは、今後、本報告書に続く2報目の報告書において、エボラウイルスの宿主となり得る動物種がもたらすリスク、およびヒトへの感染リスクを高める要因について考察する予定である。

 アフリカではこれまでに計27件のエボラウイルス感染アウトブレイクが報告されている。西アフリカの主にギニア、リベリアおよびシエラレオネで現在発生中のアウトブレイクは、世界保健機関(WHO)に2014年3月に最初に報告された。WHOによると、2013年12月〜2014年10月に計13,703人の患者が発生し、このうち4,920人が死亡している。このアウトブレイクに関する最新情報は、欧州疾病予防管理センター(ECDC)のウェブサイト(http://www.ecdc.europa.eu/en/Pages/home.aspx)から入手できる。

 (EFSA科学報告書)
フードチェーンを介したエボラウイルス(EBOV)伝播のリスクに関する最新報告書
An update on the risk of transmission of Ebola virus (EBOV) via the food chain
EFSA Journal 2014;12(11):3884
Published: 04 Nov 2014, Approved: 24 Oct 2014
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3884.htm
(報告書全文PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/doc/3884.pdf


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部