世界保健機関(WHO)からのカンピロバクター関連情報
http://www.who.int/en/


新規抗生物質が早急に必要な細菌のリストを世界保健機関(WHO)が発表
WHO publishes list of bacteria for which new antibiotics are urgently needed
27 FEBRUARY 2017
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2017/bacteria-antibiotics-needed/en/

(食品安全情報2017年6号(2017/03/15)収載)


 世界保健機関(WHO)は、抗生物質に耐性を示す「優先度の高い病原菌」のリストを初めて発表し、ヒトの健康に最大の脅威となる12種類の細菌を明らかにした。

 このリストは、世界的に増加しつつある抗菌剤耐性に対処するためのWHOの活動の一環として、新たな抗生物質の研究開発(R&D)の先導となることを目指して作成された。

 このリストでは、複数の抗生物質に耐性を示すグラム陰性細菌の脅威が特に重要視されている。これらの細菌は、治療薬に抵抗する新しい方法を見出す能力を初めから備えており、他の細菌に遺伝物質を伝達し、他の細菌が同様の薬剤耐性を獲得することを可能にする。

 今回WHOが発表したリストは、新たな抗生物質開発の必要性の緊急度に従って優先度が「最高レベル(Critical)」、「高レベル(High)」、「中レベル(Medium)」の3つのカテゴリーに分類されている。

 優先度が最も高い「最高レベル」のグループには、病院、介護施設、および人工呼吸器や血管内カテーテルなどの機器が必要な患者に対し特別な脅威をもたらす多剤耐性細菌が含まれている。このグループの例としては、アシネトバクター属菌、シュードモナス属菌、および種々の腸内細菌科菌群(クレブシエラ属菌、大腸菌、セラチア属菌、プロテウス属菌など)が挙げられる。これらの細菌は、血流感染や肺炎のような死に至ることもある重度の感染症の原因となり得る。

 これらの細菌は、多剤耐性菌感染症の最も優れた治療薬として利用可能なカルバペネムや第三世代セファロスポリン系などの多くの抗生物質に対し耐性を獲得している。

 優先度が2番目の「高レベル」および3番目の「中レベル」のカテゴリーには、薬剤耐性を獲得しつつあるその他の細菌で、淋病やサルモネラ食中毒などの、より一般的な疾患の原因となるものが含まれている。

 このリストは、新たな抗生物質の発見を目指す公的および民間機関が基礎研究および先端的な研究開発に取り組むことのできる政策を各国政府に促すことを目的としている。またこのリストは、新たな抗生物質の非営利的な開発に携わる「顧みられない病気の新薬開発に関するWHOのイニシアティブ(WHO/Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi) Global Antibiotic R&D Partnership)」などの新しい研究開発イニシアティブに対し指針を示すものとなる。

 結核菌は、既存の治療薬への耐性が近年増加しているが、結核菌をターゲットとした特別のプログラムが別に存在するため、今回のリストには含まれていない。また、A群/B群レンサ球菌およびクラミジアなど、今回のリストに含まれなかったその他の細菌は既存の治療薬への耐性レベルが低く、現時点では公衆衛生上の脅威は重大ではない。

 本リストは、国際的な専門家グループが精査した多基準決定解析技術を用い、ドイツのチュービンゲン大学感染症学部と共同で作成された。本リストへの病原菌の選択基準は、当該感染症の致死率の高さ、治療のために長期入院が必要か、市中感染での既存の抗生物質への耐性率、「動物-動物」「動物-ヒト」「ヒト-ヒト」間での伝播のしやすさ、感染予防(良好な衛生、予防接種などにより)が可能か、治療法の選択肢の多さ、新たな抗生物質の研究開発がすでに進行しているか、などであった。


新規抗生物質の研究開発のためにWHOが作成した優先度の高い病原菌のリスト

優先度1:最高レベル(Critical)
1. カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii
2. カルバペネム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa
3. カルバペネム耐性、ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生性腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae

優先度2:高レベル(High)
1. バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium
2. メチシリン耐性、バンコマイシン中間耐性/耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus
3. クラリスロマイシン耐性ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori
4. フルオロキノロン耐性カンピロバクター属菌(Campylobacter spp.)
5. フルオロキノロン耐性サルモネラ属菌(Salmonellae
6. セファロスポリン耐性、フルオロキノロン耐性淋菌(Neisseria gonorrhoeae

優先度3:中レベル(Medium)
1. ペニシリン非感受性肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae
2. アンピシリン耐性インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae
3. フルオロキノロン耐性赤痢菌属菌(Shigella spp.)


(WHO報告書)
新規抗生物質の研究、発見および開発を支援するために作成された世界的に重要な抗生物質耐性菌のリスト
Global priority list of antibiotic-resistant bacteria to guide research, discovery, and development of new antibiotics
27 February 2017
http://www.who.int/medicines/publications/WHO-PPL-Short_Summary_25Feb-ET_NM_WHO.pdf?ua=1
http://www.who.int/medicines/publications/global-priority-list-antibiotic-resistant-bacteria/en/


(関連記事)
欧州疾病予防管理センター(ECDC)
WHO publishes list of bacteria for which new antibiotics are urgently needed
28 Feb 2017
https://ecdc.europa.eu/en/news-events/who-publishes-list-bacteria-which-new-antibiotics-are-urgently-needed



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部