欧州食品安全機関(EFSA)からの大腸菌O104関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


2011年のドイツおよびフランスでの志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O104:H4アウトブレイクに関連するフェヌグリーク(fenugreek)種子の追跡調査
Tracing seeds, in particular fenugreek (Trigonella foenum-graecum) seeds, in relation to the Shiga toxin-producing E. coli (STEC) O104:H4 2011 Outbreaks in Germany and France
Published: 5 July 2011, Issued: 5 July 2011
http://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/176e.htm
(報告書)
http://www.efsa.europa.eu/en/supporting/doc/176e.pdf

(食品安全情報2011年14号(2011/7/13)収載)

 2011年5月21日、ドイツは、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O104:H4感染アウトブレイクの発生を報告した。5月1日〜6月28日の間に溶血性尿毒症症候群(HUS)患者838人および下痢を呈するSTEC感染患者3,091人が報告され、このうち47人が死亡した。

 6月24日にはフランスが、6月8日にボルドー近郊のBèglesで開催された行事に参加した後に出血性下痢を発症した患者クラスターの発生を報告した。6月28日時点で、出血性下痢症患者8人とHUS患者8人が確認された。このうち11人(女性7人、男性4人、31〜64歳)がこの行事に参加していた。HUS患者のうち4人の大腸菌O104:H4感染が確認された。

 フランスの患者のうち6人が6月8日の行事でスプラウトを喫食したと報告し、残品の分析が行われている。アウトブレイクの調査により、感染源として疑われたフェヌグリーク、ルッコラおよびマスタードのスプラウトは、行事の主催者が認可ガーデンセンターで種子を購入して少量を自家栽培したものであり、ドイツのアウトブレイクに関連していた発芽業者から輸入されたものではないことが明らかになった。6月8日の行事に参加した人を対象に分析疫学調査を行っている。フランス国内での追跡調査により、種子は英国に本拠地を置く会社が認可ガーデンセンター(approved garden centre)に出荷したものとみられる。

 欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)は、2件のアウトブレイクの感染源を特定し、今後のアウトブレイクに関するリスク低減策の策定に役立てるために、包括的な後ろ向き追跡調査(および前向き追跡調査)を開始するよう欧州委員会(EC)から緊急に要請された。この調査では特に、フランスの患者クラスターの感染源として疑われたスプラウト種子とドイツ北部の大規模アウトブレイクとの間に関連があるかどうかを明らかにすることに重点が置かれた。本報告は、後ろ向き追跡調査における手順、および前向き追跡調査ですでにタスクフォースが着手している活動について報告している。

 後ろ向き追跡調査は、食品由来疾患の調査において関与した製品の生産/流通チェーンと由来を特定するために用いる方法である。一方、前向き追跡調査は、疑いのある製品について産地から消費者への方向の流通経路を明らかにすることを目的としている。

 今回の調査ではこのような方法を用い、追跡調査で特定された生産/流通チェーンの各段階で、疑いのあるロットの全種子について調査した。目的は、感染源である可能性の高いロットおよびそのロットの現在の存在場所の特定である。

 フランスとドイツのアウトブレイクの後ろ向き追跡調査の結果を比較することにより、輸入業者がエジプトから輸入したフェヌグリークの種子のうち、ロット番号48088が感染源である可能性が最も高いことが示された。ただし、他のロットが関与している可能性も排除できない。

 少量の汚染物質でも暴露すると健康に重大な影響を及ぼす可能性があることや、また、感染源、汚染経路、交差汚染等に関する情報が不足していることから、特定された輸出業者からのフェヌグリーク種子全ロットに疑いがあるとみなすのが妥当とみられる。検査の結果は分析・診断能力や検体採取計画の内容によって影響を受けたり制約されることがあるため、これまでに行った種子の微生物学的検査の結果が陰性であっても、そのバッチがSTEC O104:H4に汚染されていない証拠と解釈することはできない。

 疑いのあるロットの製品を購入した加盟国は、これまで考えられていた数より遥かに多く、他の加盟国やEU以外の国が購入している可能性も否定できない。前向き追跡調査は複雑かつ広範囲になってきており、結果が出るまでに数週間を要する可能性がある。

 本報告は、このアウトブレイクの原因究明に寄与する多くの結果のうちの1つであり、単独で判断すべきではない。今回の調査結果はこれまでに行われた他の調査結果と一致している。具体的には、ドイツとフランスのアウトブレイクには関連があり、輸入業者が販売する前の時点でSTEC O104:H4に汚染されていた輸入フェヌグリーク種子が感染源であるという仮説を裏付けている。種子のSTEC O104:H4汚染は、ヒトや動物の糞便の汚染が生じ得る生産/流通過程での汚染を示している。正確な汚染場所はまだ明らかでないが、一般的にはこうした汚染は農場レベルで生産時に生じることがある。輸入業者も含め生産後の段階で汚染される可能性も否定できないが、密閉容器での輸送中に汚染が起こった可能性は極めて低い。

(関連記事) EFSA publishes report from its Task Force on the E. coli O104:H4 outbreaks in Germany and France in 2011 and makes further recommendations to protect consumers
5 July 2011
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/110705.htm


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部