欧州疾病予防管理センター(ECDC)からの大腸菌O104関連情報
http://www.ecdc.europa.eu/


ECDCと欧州食品安全機関(EFSA)が志賀毒素産生性大腸菌(STEC)アウトブレイクに関する合同の迅速リスク評価を発表
ECDC and EFSA issue a joint rapid risk assessment on the Shiga toxin-producing E. coli (STEC) outbreak
29 Jun 2011
http://ecdc.europa.eu/en/press/news/Lists/News/ECDC_DispForm.aspx?List=32e43ee8%2De230%2D4424%2Da783%2D85742124029a&ID=452&RootFolder=%2Fen%2Fpress%2Fnews%2FLists%2FNews(6月29日)

(報告書本文) EFSA/ECDC JOINT RAPID RISK ASSESSMENT: Cluster of haemolytic uremic syndrome (HUS) in Bordeaux, France
29 June 2011 (updated from 24 June)
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/2011June29_RA_JOINT_EFSA_STEC_France.pdf(6月29日)

(食品安全情報2011年14号(2011/7/13)収載)

背景

 2011年6月24日、フランスのボルドー地域で出血性下痢または溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した患者クラスター8人が報告された。6月28日までに当該地域でHUSまたは出血性下痢患者15人が確認された。このうち11人は、6月8日にボルドーのBégles地区で開催された行事に参加しており、そのうちの8人が大腸菌感染の重篤な合併症であるHUSを発症した。行事に参加した11人のうち7人は31〜64歳の女性で、残りの4人は34〜41歳の男性であった。これら11人の発症日は6月15〜20日であった。3人については大腸菌O104:H4感染が確定した。分離株の性状は、同様の抗生物質耐性プロファイルを示すドイツのアウトブレイク株と類似していた。

 患者のうち9人は6月8日の行事でスプラウト(フェヌグリーク、マスタード、ルッコラ)を喫食したと報告しているが、残りの2人については喫食歴に関する情報がまだ得られていない。現在、残ったスプラウト種子を分析している。感染源の疑いのあるこれらのスプラウトは地元で生産されたものであり、ドイツのアウトブレイクに関連している農場から輸入されたものではない。初期調査からは、フランスのスプラウト生産に使用された種子は英国の会社から出荷されたことが示唆された。現在、疑いのあるこのスプラウト種子の起源を特定し、このクラスターとドイツの大規模アウトブレイクとの関連性を明らかにするための追加調査が実施されている。6月8日の行事への参加者を対象に分析疫学調査が行われている。

 2011年6月28日には、スウェーデンから大腸菌O104:H4感染が確定した同国南部の成人男性患者1人が報告された。この患者はドイツへの最近の旅行歴はなく、潜伏期間中のスプラウトの喫食についても記憶していないが、さらに調査が進められている。

 フランスのクラスターおよびスウェーデンの患者は、2011年5月からドイツ北部で発生している大腸菌O104:H4の大規模アウトブレイク(地元の生産業者由来のスプラウトの喫食と関連している可能性が高いとされている)との関連で報告された。ドイツのアウトブレイク株の性状解析から、この株が多剤耐性であり、CTX-M-15基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)を産生することが示された。ドイツでは、2011年5月1日〜6月27日にHUS患者838人および志賀毒素産生性大腸菌(STEC)感染患者3,063人が報告され、これらのうち47人が死亡した。ドイツで報告されたSTEC O104確定患者およびHUS患者の直近の発症日は、それぞれ6月12日および6月22日である。6月28日までに、ドイツのアウトブレイクに関連した患者が欧州連合および欧州経済領域(EU/EEA)加盟12カ国から報告されており、これらの合計患者数はHUSが878人、HUSを発症していないSTEC患者が3,134人で、スウェーデンでの死亡者が1人追加された。

 フランスでは、北部でも6月初旬にビーフバーガーの喫食に関連した別の血清型のSTECによるHUSの小児クラスターが報告されたが、このクラスターと現在ボルドーで発生中のクラスターとの間に関連はない。

原因食品の特定

 フランスのHUSクラスターに関する予備的データおよびドイツのアウトブレイク調査の詳細情報により、スプラウトの喫食が両国の大腸菌O104:H4の感染源であったことが示唆された。ボルドーにおける分析疫学調査および残った種子・食品と小売店から採集した種子に関する微生物学的調査から、この仮説に関してさらなるエビデンスが得られる可能性がある。しかし、食品(種子などを含む)における大腸菌汚染の特定は困難であり、微生物学的エビデンスを確立できない可能性もある。

EUレベルでの食品の追跡調査

 フランスのクラスターとドイツのアウトブレイクの双方においてスプラウトの喫食が感染経路として疑われており、両国の患者から分離された大腸菌O104:H4株が同じであったことから、上記2件の間の関連が示唆されている。したがって、ドイツとフランスのスプラウト生産チェーン(販売チェーン、販売業者、小売業者、納入業者)の共通点および汚染の可能性があるスプラウト種子のバッチを特定するための追跡調査(食品に関する後ろ向き調査(trace-back)および前向き調査(trace-forward))を国・EUレベルで強化し、早急に感染媒体を取り除くための回収通知を出す必要がある。このような追跡調査には、各国、EUおよび公衆衛生や食品安全関連の国際機関による緊密な協力が不可欠である。現在、欧州委員会(EC)の要請によってこの目的のために設立された欧州食品安全機関(EFSA)タスクフォースがこれらの協力体制の調整を行っている。

 追跡調査は進展しており、今のところ2009〜2010年にエジプトから輸入されたフェヌグリーク種子が両アウトブレイクに関連していることが明らかになっている。現時点では細菌学検査で陽性結果が得られていないため、当該種子が本当にすべての患者に共通する因子であるかどうかについてはまだ多くの不確実性が残されている。具体的には、2009年のロットはフランスのアウトブレイクに関連しているとみられ、2010年のロットはドイツのアウトブレイクに関連していると考えられている。また、この仮説では、現時点でスプラウトの喫食との関連が示されていないスウェーデンの最新患者については説明することができない。

 これらはいずれも詳しく調査中であるが、特に、ドイツおよび欧州全域における当該ロットの種子の流通に関する調査は急を要している。エジプトから輸入された種子の一部が英国の会社(種子をフランスに輸出した会社)に出荷されていたことは、上記の情報の必要性を証明している。発芽用に販売される種子はしばしばミックスシードとして販売されるため、再包装時の交差汚染の可能性も排除できない。したがって、現段階での消費者に対する助言は、すべての種子およびそれに由来する生のスプラウトを対象とすべきである。

結論

 これまでに入手できた情報にもとづくと、今回のフランスのHUSクラスターは6月8日のボルドーの地域行事への参加者に限定されている。しかし、感染源(発芽したスプラウト、スプラウト種子、その他の食品)も含め、5〜6月にドイツで報告された大腸菌O104:H4アウトブレイクとの関連の可能性について調査中である。フランスのクラスターについては、スプラウトが可能性の高い感染源として疑われているが、スプラウトの汚染源とともに、さらに微生物調査および追跡調査を通じて確認する必要もある。本アウトブレイクの感染源が特定されるまでに、また患者が新しく確認される可能性がある。

 現時点では、ドイツおよびフランスの最近の大腸菌O104:H4アウトブレイクの可能性のある感染源として、フェヌグリークのスプラウトが関係しているとされている。ECDCおよびEFSAは、調査が終了するまで、喫食用のスプラウトの栽培および加熱不十分なスプラウト・スプラウト種子の喫食を避けるよう消費者に助言することを関係当局に強く勧告する。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部