欧州疾病予防管理センター(ECDC)からの大腸菌O104関連情報
http://www.ecdc.europa.eu/


ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)、ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)およびロベルト・コッホ研究所(RKI)が共同声明を発表
Joint statement issued by the Federal Institute for Risk Assessment (BfR), Federal Office of Consumer Protection and Food safety (BVL), Robert Koch Institute (RKI)
June 10, 2011
http://www.ecdc.europa.eu/en/press/news/Documents/1106_Joint_Press_Release_German_authorities_issue_a_joint_statement.pdf

(食品安全情報2011年12号(2011/6/15)収載)

結論

1.ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)、ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)およびロベルト・コッホ研究所(RKI)は合同で、ドイツ北部でのキュウリ・トマト・レタスの喫食を避けるべきとしていたこれまでの推奨事項を継続する必要はないと結論した。

2.BfR、BVLおよびRKIは、適正衛生規範の厳守に加え、生のスプラウトの喫食を避けるよう推奨する。家庭や食品関連業者は、在庫として保持しているすべてのスプラウトおよびこれらと接触した可能性があるすべての食品を廃棄しなければならない。

3.BfR、BVLおよびRKIは、ニーダーザクセン州の当該生産業者から出荷されたすべての食品を市場から回収するよう勧告する。

4.BfR、BVLおよびRKIは、食品の取扱いまたは患者の看護の際には適正衛生規範を厳守するよう推奨する。

これらの推奨事項は、BfRおよびRKIが以前に発表していたキュウリ、トマト、レタスの喫食に関する推奨事項に代わるものである。
(以下一部を紹介)

初期の疫学調査

 2011年5月20日以降、RKIはその他の連邦および州の保健・食品安全当局と協力し、ドイツ北部で発生している溶血性尿毒症症候群(HUS:hemolytic uremic syndrome)アウトブレイクを調査している。次々に実施されたいくつかの疫学調査の分析を通じて、アウトブレイクの感染源が徐々に絞り込まれてきた。

 方法論的な理由により、最初の2件の症例対照研究では、大部分の患者の発症が説明できるように、広範な予備的聞き取りにもとづいて仮定した暴露源に限定した。これらの症例対照研究の疫学的分析から、症例は健康な対照と比較して生のトマト・キュウリ・レタスの喫食頻度が有意に高かった。患者が発生した食堂の客を対象として実施された別の症例対照研究でも、サラダバーの食品の喫食とEHEC感染の強い関連が明らかになり、前述の調査結果が裏づけられた。これら2件の調査結果および食品安全当局の調査で得られた情報のいずれも、より正確な感染源の特定には不十分であったため、RKIは追加調査を開始した。

レシピにもとづく飲食店のコホート調査

 「レシピにもとづく飲食店のコホート調査」の結果、最終的に高い確率で感染源を「スプラウトの喫食」に絞り込むことができた。この方法論的アプローチの適用は、この分析法の統計的検出力を確保するのに十分な飲食店の客数が特定できて初めて可能であった。

 RKIは、症例および対照による生の果物および野菜の喫食歴について、可能な限り記憶に頼らずより客観的に調査するため、「レシピにもとづく飲食店コホート調査」において以下のアプローチを用いた。 19人のEHEC患者を含む計112人の調査対象者から成る5つのグループ(旅行グループ、クラブなど)に対し、同一の飲食店で喫食した食品に関する質問を行った。

また、調査対象者が注文した料理を注文リストおよび食事のレシートから特定した。飲食店の厨房スタッフには、調査対象顧客から注文を受けたすべての料理に関する調理法および材料の種類と使用量について詳細に質問した。さらに、旅行グループのメンバーが撮影した料理の写真が入手できた場合には、トッピングを含め、皿に盛られている食品を確認した。このようにして収集されたデータをコホート法で分析した(飲食店の顧客への感染相対リスクの後ろ向き推定を可能とするため)。この分析の結果、スプラウトの喫食者のEHEC/HUS感染リスクが、喫食しなかった調査対象者の8.6倍(95%信頼区間(CI)=1.5〜∞))であることが示された。この調査からは、発症者全員(100%)がスプラウトを喫食していたことも明らかになった。

スプラウトの喫食に関する症例対照研究からの知見

 2011年5月20〜21日にハンブルクで実施された最初の予備的聞き取りにおいて、患者に対し、スプラウトを含めた多くの動植物由来食品の喫食に関する質問を行った。その際、スプラウトの喫食を報告した患者は12人中3人のみであった。当該調査の対象者は喫食に対する意識が高かったことから、スプラウトの喫食を認識していなかった可能性は低かった。アウトブレイク調査の標準的な方法では、アウトブレイク患者の多くが暴露している可能性のある原因物質を質問票に盛り込むことが必要とされる。一方で可能性のある暴露源を質問票に多く盛り込みすぎると、誤った(偽陽性の)関連性が示される可能性がある。これらの理由から、最初の症例対照研究の質問票にはスプラウトは盛り込まれなかった。後日、RKIが実施したより広範な聞き取り調査では、スプラウトの喫食が盛り込まれた。広範な調査でスプラウトの喫食について回答した患者54人のうち、16人(30%)が感染時期と一致する期間内にスプラウトを喫食していたと回答した。

 2011年5月29日、リューベック、ブレーマーハーフェンおよびブレーメンにおいて、植物由来食品に関する詳細な調査を目的とした追加の症例対照研究が開始された。この調査では、HUS患者26人のそれぞれに対して、年齢、性別および居住地域をマッチさせた対照者3人ずつを用いた。感染時期とみなされる期間内にスプラウトを喫食したと回答したのは、患者では24人のうち6人(25%)、健康な対照者では80人のうち7人(9%)であった。この関連は、単変量解析では統計学的に有意であったが(オッズ比(OR):4.35、95% CI [1.05〜18])、多変量解析では検出力が十分ではなく、有意ではなかった。この調査に参加した患者では、トマト・キュウリ・レタスなどの野菜の喫食報告が対照者と比較して多かったものの統計学的には有意ではなかった。これらの結果は既報の2件の症例対照研究の結果と矛盾せず、これらの野菜が同時に頻繁に喫食されていたことが示された。

現時点で得られているフードチェーンに関連する情報

 EHEC O104:H4は、現時点では小売段階の食品からは検出されていない。RKI、BfRおよびBVLを含めた関連州当局すべてによる集中した取組みにもかかわらず、フードチェーンにおけるEHEC O104:H4の明確な汚染段階はいまだ特定されていない。

 最新の情報によると、EHEC感染の拡大がニーダーザクセン州の1農場を起点にしている可能性があり、多数の患者クラスターの地理的分布と一致していることが流通チェーンから示されている。

 ニーダーザクセン州の当該農場由来のスプラウトの流通・供給チェーンの解析により、ドイツ5州のEHEC O104:H4感染クラスターまたは散発患者55のうち26を説明することができる。現時点では、ヒトを介した農場のEHEC汚染の可能性も排除できない。水、さらに前の段階の供給元、あるいは種子などが汚染源である可能性もある。これらの可能性についても、供給チェーンの調査や検査機関での分析を通じて現在調査中である。

 現時点では、この特定の農産物へのその他の汚染源も除外できない。ニーダーザクセン州当局およびBfRは、ここ数日間のこの農場における検体を広範に採取しており、調査はまだ完了していない。検体からはまだアウトブレイク株が検出されていないが、蓄積されたエビデンスは、この生産業者がアウトブレイクの感染源であることを強く示唆している。連邦および州当局は、汚染されたスプラウト生産用種子が他の会社にも存在する可能性や市場に出回る可能性について調査するため、供給・流通チェーンの調査と分析を行う予定である。スプラウト生産に使用される種子が汚染源である可能性もあるため、当該農場以外のスプラウト生産業者もEHEC O104:H4感染拡大に関係している可能性がある。そのため、RKI、BVLおよびBfRは、汚染源が正確に判明するまで、加熱しないスプラウトの喫食を避けるよう推奨する。

(関連情報)
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)
EHEC: Current State of Knowledge Concerning Illnesses in Humans
10.06.2011
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2011/16/ehec__current_state_of_knowledge_concerning_illnesses_in_humans-70978.html


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部