ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からの大腸菌O104関連情報
http://www.bfr.bund.de/en/home.html


腸管出血性大腸菌O104:H4の基本的プロファイル
Enterohaemorrhagic Escherichia coli (EHEC) O104:H4: a brief bacteriological introductory profile
Opinion No. 019/2011 of BfR of 7 June 2011
http://www.bfr.bund.de/cm/349/enterohaemorrhagic_escherichia_coli_o104_h4.pdf

(食品安全情報2011年12号(2011/6/15)収載)

 大腸菌には病原性を持たないものや持つものなど様々な株がある。現在発生中の腸管出血性大腸菌(EHEC)アウトブレイクに関しては、病因物質として大腸菌O104:H4が特定された。これはおそらく2種類の病原性大腸菌の組換え型である。

 大腸菌O104:H4の株の解析により、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、今回のアウトブレイクでは、ヒトを介して、またはヒトから環境を介して病因物質が食品に移行した可能性が高いと考えている。病因物質は食品を介して拡散することができる。

 この数十年間、感染症学では病原性大腸菌の研究が重要な研究領域であった。志賀毒素(Stx)2型を産生する大腸菌O104:H4株は2001年に初めて分離され、HUSEC41と命名された。その後、2006年の論文にEHEC O104:H4が再度記載された。この菌は韓国で溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した女性から分離されたが、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)との関連など、より詳細な性質について当時は検査も発表も行われなかった。

 今回のアウトブレイクに関連する株のDNA配列解析を行ったところ、EHEC O104:H4は、従来の志賀毒素産生性大腸菌(STEC)/腸管出血性大腸菌(EHEC)より、EAggECと共通点が多いことが判明した。既知のEHECとは似ておらず、確認されているEAggECの塩基配列との相同性が93%であった。今回のアウトブレイク株にみられるEHEC特異的な特徴はstx遺伝子である。今回の株は、中央アフリカのヒト由来で塩基配列が判明しているEAggEC株に類似している。今回の株は2種類の病原性大腸菌(EHEC eae、stxおよびEAggEC)の組換え体であるが、古典的EHECに典型的なeae(A/E病変)遺伝子を保有していない。

 現在の知見では、EAggECのレゼルボアはヒトであり、一方、STEC/EHECは動物(主に反芻動物)である。BfRにある大腸菌国立リファレンス検査機関では、これまでに動物または食品から病原性のEAggECを検出したことはない。文献的にも、これまでに食品または動物に存在することを示した報告はない。またEHEC O104は世界全体でこれまでに数件しか検出されていない。BfRは、今回のアウトブレイクがヒト−ヒト感染によって伝播したことを示す調査結果は得ていない。この事実はヒトが食品や環境の汚染源である可能性を示唆している。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部