(食品安全情報2011年11号(2011/6/1)収載)
2011年5月、腸管出血性大腸菌(EHEC)感染患者が増加し、重症化する患者や死亡者も出た。現在までの調査結果によると、細菌に汚染されたトマト、キュウリまたはグリーンサラダが感染源である疑いが強い。通常、果物および野菜による感染リスクは動物性食品より低い。しかし、2011年5月のアウトブレイク状況を背景に、消費者は感染リスクをできる限り低く抑えるため、果物や野菜の扱いに注意する必要がある。
人はどのように野菜や果物からEHEC感染するのか?
人へのEHEC感染は一般的には経口感染である。EHECに汚染された食品の喫食によって病原体が取り込まれるため、汚染された野菜または果物からも感染する。
なぜ野菜や果物はEHECに汚染されるのか?
果物や野菜は、EHECに汚染された水または天然肥料、調理中の交差汚染によって汚染される可能性がある。また、交差汚染では、汚染された(主に生の)食品(食肉など)の菌が他の(主に“そのまま喫食可能な”)食品(サラダなど)に移行することもある。食品との直接接触による場合もあれば、手指・道具・作業台表面・包丁などの調理器具を介して間接的に移行する場合もある。たとえば、生肉を扱った後に同じ包丁でサラダ用野菜を切ることによっても交差汚染が発生する。
野菜や果物からのEHEC感染を防ぐには?
基本的には衛生規則を守ることによって感染リスクを低下させることができる。野菜や果物に関しては以下のことを守るべきである。
今回の深刻なアウトブレイクを受け、アウトブレイクの正確な原因が特定されるまでは、上記のような衛生上の対策に加え、感染源として疑われている野菜を生で喫食しないよう推奨されている。感染するには少数の菌で十分であるため、伝播は非常に容易である。
EHECはどのようにしたら殺菌できるか?
EHECは、焼く、揚げる、蒸すなどの加熱によって殺菌される。食品の中心部が70℃に達した状態を最低2分間維持することによって殺菌できる。EHECは、酸性、低温、乾燥などの環境には比較的強く、食品の低温冷凍ではEHECを効果的に殺菌することはできない。
EHECは保存食品の製造における通常の加熱工程で生残できない。キュウリのピクルスのような食品の場合には一般に低いpHと塩分が効果的な保存剤となる。袋詰めサラダなど、洗っただけで加熱していない野菜にはEHEC汚染の可能性がある。