ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からの大腸菌O104関連情報
http://www.bfr.bund.de/en/home.html


ドイツの腸管出血性大腸菌(EHEC)感染アウトブレイクの感染源はエジプトから輸入したフェヌグリーク(fenugreek)の種子
EHEC O104:H4 outbreak event in Germany clarified: sprouts of fenugreek seeds imported from Egypt as underlying cause
21/2011, 05.07.2011
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2011/21/ehec_o104_h4_outbreak_event_in_germany_clarified__sprouts_of_fenugreek_seeds_imported_from_egypt_as_underlying_cause-83273.html

(報告書本文)
Relevance of sprouts and germ buds as well as seeds for sprout production in the current EHEC O104:H4 outbreak event in May and June 2011
Updated Opinion No. 23/2011 of BfR of 5 July 2011
http://www.bfr.bund.de/cm/349/significance_of_sprouts_and_germ_buds_as_well_as_seeds_for_sprouts_production_in_the_current_ehec_o104_h4_outbreak_event_in_may_and_june_2011.pdf

(食品安全情報2011年14号(2011/7/13)収載)

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR : Bundesinstitut fúr Risikobewertung)は、国内で発生した腸管出血性大腸菌(EHEC)感染アウトブレイクに関連するスプラウトとその種子について包括的なリスクアセスメントを行い、ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)およびロベルト・コッホ研究所(RKI)とともに以下のように結論づけた。

 今回のアウトブレイクはドイツで最大の溶血性尿毒症症候群(HUS)/EHECアウトブレイクである。さらに、HUSの患者数では世界最大のアウトブレイクである。ドイツのEHEC O104:H4感染の新規患者数は減少している。下痢症の発症日で見たアウトブレイクのピークは2011年5月22日であり、それ以降EHECとHUSの新規患者数は減少している。しかし、ヒト−ヒト感染または感染者に汚染された食品などによって、更なるEHEC O104:H4感染の新規患者またはアウトブレイクの発生が予想される。

 ドイツのEHEC O104:H4アウトブレイクは、詳細が明らかになってきている。EHEC O104:H4に汚染されたフェヌグリーク種子がエジプトから輸入され、ニーダーザクセン州のある園芸農場がこの種子からスプラウトを栽培した。このスプラウト用の種子が感染源である可能性が高い。患者はこのスプラウトの喫食によって発症したが、ヒトを介した二次感染による患者もいるとみられる。

 ここ数週間、連邦および各州当局は、スプラウトのEHEC O104:H4汚染について可能性のある汚染経路の特定に努め、いくつかの州、BfR、RKI、BVLおよびEFSAの専門家からなるEHECタスクフォースの調査結果も考慮された。41の患者クラスター(患者が集中している地域)や食品の出荷リスト、流通経路について検討した結果、ドイツのアウトブレイクの感染源はニーダーザクセン州の園芸農場1カ所が出荷したスプラウトである可能性が示された。

 欧州全体の状況を解明するため、EFSAはドイツのタスクフォースの方針を引き継いで、欧州タスクフォースを設置した。6月下旬にフランスで発生したEHEC O104:H4感染患者に関しても、ニーダーザクセン州の当該園芸農場がスプラウト栽培に使用したのと同じバッチのフェヌグリーク種子との関連が判明した。このバッチは2009年産であった。また、同州の当該園芸農場は、2011年4〜5月に2010年産の別のバッチのフェヌグリーク種子も使用していた。6月29日のEFSAの発表によると、これらの2バッチは同じ仲介業者を介してエジプトから輸入したものであった。

 このため、ドイツの関係当局はこの2バッチのフェヌグリーク種子の全流通経路を明らかにして市場から回収するよう勧告された。流通経路を追跡調査することにより、生産業者や販売業者が汚染されたバッチを完全に破棄し、消費者の手に渡るのを防ぐことができる。現在、これらの対策が実施されている。

 現時点では、原産国での不衛生な生産条件、あるいは仲介業者や納入先での交差汚染(洗浄、混合、包装の過程で)によって他種の種子や他のバッチもアウトブレイク株に汚染されたことを示唆する具体的な調査結果はないが、その可能性も考えられる。

 EHECに汚染されたスプラウトの種子が現在も市場に出回っている可能性があることから、生のスプラウトを喫食しないようにというドイツ当局の助言(6月10日付け)は現在も有効である。家庭では、まだ残っているスプラウトの種子や種子のブレンドも他の廃棄物とともに破棄すべきである。

 フェヌグリーク種子は昔からスパイスや薬として使用されている。したがって、サプリメントなど様々な製品に含まれている。しかし、これまでに、フェヌグリーク種子から製造されたスプラウト以外の製品によってEHEC O104:H4に感染したと考えられる事例は報告されていない。しかしながら、現時点では、個々の病原菌が特定の条件下で種子の内部または表面で生残できる可能性も排除できない。アウトブレイクの原因に関する新しい調査結果を背景に、BfRは、スプラウト以外の製品に含まれる加工・未加工のフェヌグリーク種子のリスクアセスメントにも取り組む。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部