ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からの大腸菌O104関連情報
http://www.bfr.bund.de/en/home.html


腸管出血性大腸菌(EHEC)O104:H4感染アウトブレイクの感染源はフェヌグリーク(fenugreek)の種子である可能性が高い
High probability of responsibility of fenugreek seeds for EHEC O104:H4 outbreak
BfR Opinion No 022/2011 of 30 June 2011
http://www.bfr.bund.de/cm/349/high_probability_of_responsibility_of_fenugreek_seeds_for_ehec_o104_h4_outbreak.pdf

(食品安全情報2011年14号(2011/7/13)収載)

 ドイツで発生した腸管出血性大腸菌(EHEC)O104:H4感染アウトブレイクに関して、連邦および州の当局は、過去数週間、スプラウトのEHEC O104:H4汚染源の特定に集中して取り組んでいる。41のアウトブレイククラスター、食品の出荷リスト、流通経路などについて検討した結果、ニーダーザクセン州の園芸農場が栽培したスプラウトと疾患の間に関連があると考えられた。同州の関係当局による初期の調査結果からスプラウト栽培用種子が汚染原因の一つである可能性があると示唆されたが、これまでのところ、検査機関の検査では確認されていない。スプラウトとスプラウト栽培用種子700検体以上からEHEC O104:H4は検出されなかった。

 それでもなお、ドイツのEHECタスクフォースが行った疫学調査の結果からは、ニーダーザクセン州の園芸農場がスプラウトの栽培に使用した種子が病原菌に汚染されていたと結論づけることが可能である。最近フランスでもEHEC O104:H4感染患者が発生したが、フランスの患者がニーダーザクセン州の園芸農場と直接的な関連はないことも、この結論を裏付けている。

 2011年6月24日、フランスは、6月15〜21日にボルドー近郊で発生したEHEC/HUS患者クラスターについて報告した。6月28日時点での患者は15人、年齢範囲は31〜64歳である(2011年6月29日発表の欧州食品安全機関(EFSA)/欧州疾病予防管理センター(ECDC)のリスクアセスメント情報より。本号ECDC記事参照)。検査機関で少なくとも3人の患者からEHEC O104:H4が検出された。これまでの解析結果によると、フランスとドイツのアウトブレイク株は同一である可能性が高い。

 フランスの患者は、フランスで自家栽培用の種子のブレンドから生産されたスプラウトを喫食したと考えられている。フランスで喫食されたスプラウトのブレンドと、ニーダーザクセン州(ドイツ)の園芸農場のスプラウトのブレンドの両方に含まれていたのはフェヌグリーク(fenugreek)のスプラウトのみであった。ニーダーザクセン州のある1家庭では、フェヌグリークを含むブレンドの種子から自家栽培したスプラウトを喫食した後に数人が発症していた。

 ドイツとフランスにおけるEHECアウトブレイクの国際的な重要性を背景に、EFSAはEUレベルでアウトブレイクの解明にあたるため、BfR(ドイツ連邦リスクアセスメント研究所)やBVL(ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁)も含むタスクフォースを立ち上げた。

 フランスのスプラウト栽培に使用された種子の生産元が特定され、食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)の警告通知を介して加盟国に通知された。フランスで使用されたフェヌグリークの種子のバッチを遡って追跡調査したところ、2009年に生産された種子のバッチが、ドイツに本拠地を置く1仲介業者を介してフランスとニーダーザクセン州の園芸農場に納入されていた。6月29日のEFSAの発表によると、このバッチはエジプトから輸入したものであった。関係当局が農場の検査を行った際には、このバッチのフェヌグリークの種子はすべて使用済みであったため、検体採取はできなかった。2011年の春、ニーダーザクセン州の園芸農場は2009年産および2010年産両方のフェヌグリーク種子のバッチを使用してスプラウトを生産したが、いずれも同じ仲介業者から購入したものであった。EFSAによると、2010年のバッチもエジプトから輸入したものであった。現在までに、このバッチからEHEC O104:H4は検出されていない。

 EFSAとECDCのリスクアセスメントの結果にもとづくと、スプラウト栽培に1種類またはブレンドで使用されたエジプト由来のフェヌグリークの種子がヒトの健康リスクとなっていることは明らかである。この種子は、家庭での栽培用として非常に少量の包装で一般消費者にも販売されている。

 これまでの調査結果から今後の調査対象が絞り込まれていくが、現時点では、原産国の非衛生的な生産条件によって他の種類やバッチの種子もアウトブレイク株に汚染されている可能性を排除できない。また、仲介業者による取り扱い(洗浄、混合、包装過程など)によって他の種類やバッチの種子との間に交差汚染が発生した可能性もある。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部