(食品安全情報2011年13号(2011/6/29)収載)
ドイツのヘッセン州フランクフルトの1農場で栽培されたサラダの野菜から腸管出血性大腸菌(EHEC)が検出され、近隣の小川の流水由来のEHECへの暴露の可能性が疑われた。このため、この流水から検体を採集して分析を行った。ヘッセン州の関係省庁(Ministry of Social Affairs およびMinistry for Environmental Affairs, Energy, Agriculture and Consumer Protection)は、これらのうち1検体からEHEC O104:H4が検出されたと発表した。しかし、サラダ検体からは別のタイプのEHECが検出された。ヘッセン州環境問題・エネルギー・農業・消費者保護省(Ministry for Environmental Affairs, Energy, Agriculture and Consumer Protection)によると、小川と公共上水道の間に関連はない。
EHECは、全く異なる様々な経路で水源に到達していた可能性がある。放牧地から流入する可能性以外にも、特に1カ所の下水処理施設からの処理水に焦点が当てられている。この施設は、フランクフルト市からの下水の処理施設である。EHECは、感染したヒトの排泄物を通じてこれらの下水に流入した可能性がある。下水処理施設では、ヒトからの病原体を大幅に低減できるが、完全に死滅させることはできない。したがって、一部のEHECは下水処理施設を通過して小川に流れ込んだ可能性がある。そこで、下水処理施設がある地域で集中的なサンプリングを行い、当該施設が小川のEHEC汚染源かどうかを調査している。
ヘッセン州の関係省庁によると、すでに過去数年間に小川から採集された検体で大腸菌を含む病原体が時々検出されていた。これは、表層水では珍しいことではない。6月17日、再度水検体が採集され、分析のため検査機関に送付された。分析結果は数日中に明らかになる予定である。
また、ヘッセン州の関係省庁は、ニーダーザクセン州で祝賀会後に発生したEHEC感染アウトブレイクについて発表したが、これは、ヒトによって汚染された食品が原因である。ヘッセン州北部のパーティサービス業者の従業員1人が、祝賀パーティ用の食品を調理した際に、すでに強毒性のEHEC O104に感染していたが、その時点でまだ発症していなかった。その後、この女性は溶血性尿毒症症候群(HUS:haemolytic uremic syndrome)を発症した。パーティ参加者65人中20人がEHECに感染し、発症した。
感染した患者が、体調が悪くないため気付かずに一定期間にわたって病原体を排出・拡散することがある。このため、食品を調理する際は、一般的な衛生規範を常に遵守することが一層重要になる。