平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

総括研究報告書

内分泌かく乱物質に対する感受性の動物種差の解明:
チトクロームP450発現を指標として

総括研究者  出川 雅邦 (静岡県立大学 薬学部教授)

研究要旨

  内分泌かく乱物質をもつPCB類や重金属(鉛)をラットやマウスに投与し、内分泌かく乱物質の代謝パターンや、ホルモン合成・分解に関わる数種のチトクロームP450(P450)分子種への影響を、それぞれ薬物代謝学的及び分子生物学的手法を用いて比較検討し、それぞれ測定した項目につき動物種差や臓器差があることを見出した。また同時に、これまでほとんどの臓器で発見し、かつ発現変動が少ないと考えられていたコレステロール合成に関わるP450分子種(CYP51)酵素の遺伝子が、硝酸鉛投与時、変動することなどの新知見を得た。これらは、内分泌かく乱物質が代謝パターンや、ホルモン合成・分解酵素系を変動させること、さらに、その変動には動物種差があることを示している。また、グルココルチコイド(GC)に感受性をもつ遺伝子プロモーター(マウス乳ガンウイルス、LTR由来)をレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)上流に連結した発現プラスミドをラット線維芽細胞3Y1に導入した細胞株の樹立に成功し、これを利用して種々の植物より新規グルココルチコイド様作用化合物を見出した。その他の成果として、1)数種のP450分子種を発現・誘導するラット肝培養細胞株を見出したこと、2)ヒト組み替えP450(CYP1A1/1A2およびCY1B1)発現系細胞を用いて、最近内分泌かく乱作用が懸念されているディーゼル排気粉塵抽出物や芳香族ニトロ化合物の代謝活性化およびこれら化合物のP450への影響を、主にumu試験を用いて検索し、ディーゼル排気粉塵抽出物や芳香族ニトロ化合物のいずれの代謝活性化にも、CYP1B1が関与していることを明らかにしたこと、3)2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)のP450酵素による代謝研究を行うことに当たり、まずはじめに、TCDDおよびその代謝物の分離・測定法およびTCDD代謝物の抽出法を確立し、次いで、本法がラット肝ミクロソームを酵素源とした場合のTCDDの代謝物の検出に有効であることを確認したことなどが挙げられる。

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