平成10年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

総括研究報告書

組換え酵母を用いるプラスチック溶出物中の内分泌撹乱物質の検索

総括研究者  片瀬 隆雄 (日本大学 生物資源科学部 教授)

研究要旨

  ヒトエストロゲンレセプター遺伝子および大腸菌lacZ遺伝子を組み込んだ酵母の、エストロゲン様活性定量系としての有効性を検証し、日常生活で使用されるプラスチック製品などのエストロゲン様活性を定量することを試みた。陽性対照としてβ-エストラジオールを用いたところ、この測定系は、反応液中の5×10-11Mのエストラジオールを再現性よく検出定量できることが分かった。この感度は、同じレセプターを試験管内細胞系で用いるものよりも数倍高感度で、さらに簡便さを勘案すれば、内分泌撹乱物質の第一次スクリーニングに本法は極めて有効であると結論できる。本法をプラスチック製品のn-ヘプタン抽出液に適用したところ、食品包装用ラップフィルム、学校給食用手袋、オモチャの一部に明らかなエストロゲン様活性が検出された。さらに、このn-ヘプタン抽出液中の化合物をガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ質量分析計を用いて分析した結果、フタル酸ジエチル、フタル酸ジベンジルブチル、フタル酸ジエチルヘキシルの3種類のフタル酸エステルおよびアジピン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジn-オクチルなど6種類のアジピン酸エステルが同定された。プラスチック製品のなかで、最も強い活性を示した給食用手袋3点から溶出したn-ヘプタン溶液中に同定された共通の化合物とその平均濃度は、フタル酸ベンジルブチル(BBP)(2500ppm)及びフタル酸ジ2-エチルヘキシル(DEHP)(7500ppm)であった。さらに、この活性を有した手袋2点から、共通にアジピン酸ジ2-エチルヘキシル(DEHA)(2500ppm)が検出された。

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