(食品安全情報2013年6号(2013/03/19)収載)
2012年に幼児と学童で急性嘔吐・下痢症のアウトブレイクが発生し、これにより地域社会の公共施設での食品提供には重い責任が伴うことが明確に示された。患者約11,000人が報告されたこのアウトブレイクは、ドイツで発生した食品由来胃腸炎アウトブレイクとしては過去最大規模となった。連邦政府と州が実施した調査の結果によると、このアウトブレイクの感染源はノロウイルスに汚染された特定バッチの冷凍イチゴであった。このイチゴは様々な業務用調理施設でヒトの喫食用に調理されていた。このアウトブレイクにより、冷凍のベリー類を十分に加熱せずに喫食すると胃腸炎にかかる可能性があることが明らかになった。このためドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、以前発行したリーフレット「安全な食品」の内容を更新し、食品を提供する公共施設に対しベリー類の調理に関する注意を促す推奨事項を収載した。
冷凍のベリー類がノロウイルスに汚染され、それが食品由来疾患アウトブレイクの感染源となり得ることは、近年発表されたデータからも明らかにされている。2012年秋のアウトブレイクの感染源となった特定バッチの冷凍イチゴからは検査機関でノロウイルスが検出され、この見解を確認する裏付けとなった。
ベリー類は、生産工程の様々な段階で不適切な灌漑や施肥などによってノロウイルスに汚染される可能性がある。また、ノロウイルスに感染したヒトにより、収穫や包装の段階で汚染される可能性もある。冷凍ベリー類の場合は、冷凍工程で加えられる水へのノロウイルスの混入による汚染も考えられる。
現時点での知見からは、冷凍ベリー類を料理に使用する際はノロウイルスに汚染されている可能性があるため、生だけでなく加熱処理が不十分な場合にも感染リスクが高くなると推測すべきである。しかし、中心温度が90°Cを超えるまで加熱することで、残存する全てのウイルスを完全に不活化することができると考えられる。
したがって、BfRはリーフレット「安全な食品:地域社会の公共施設で特に被害を受けやすいグループ(“Safe food: especially vulnerable groups in community institutions”)」の内容を更新し、当該グループに対しては冷凍ベリー類を十分に加熱しないまま提供しないよう注意を促している。本リーフレットの対象は、これらの施設で食品提供を担当する従業員である。BfRは、対象者が法的要件に従うことを支援するためにこれらの情報提供を行っている。
リーフレットの更新版(ドイツ語)は、BfRの以下サイトから入手可能。
http://www.bfr.bund.de/de/publikationen.html
(食品安全情報(微生物)No.21 / 2012(2012.10.17) BfR記事参照)