デンマーク国立血清学研究所(SSI)からのカンピロバクター関連情報
http://www.ssi.dk


2016〜2017年のデンマークのカンピロバクター感染症
Campylobacter infections, 2016-2017
Last revised 20 April 2018
https://www.ssi.dk/English/PublicHealth/Surveillance%20in%20Denmark/Annual%20reports%20on%20disease%20incidence/Campylobacter%20infections%202016-2017.aspx

(食品安全情報2018年14号(2018/07/04)収載)


 デンマークでは2016年にカンピロバクター属菌感染患者が計4,678人(人口10万人あたり82人)登録され、2015年より7%増加し過去最高となった。これとは対照的に、2017年は登録患者数が減少して計4,243人(人口10万人あたり74人)となり、2015年を下回った。年間登録患者数の長期的な推移はデンマーク国立血清学研究所(SSI)の以下のWebページに示されている。一部の分離株(435株)についてカンピロバクターの種名が特定され、27株(6.2%)がC. coli、残りがC. jejuniであった。カンピロバクター分離株は通常、性状解析のためにSSIに提出されることはない。
https://www.ssi.dk/Smitteberedskab/Sygdomsovervaagning/Sygdomsdata.aspx?sygdomskode=CAMP&aar=2001|2017&kon=&aldersgruppe=&landsdelkode=&maaned=&udlandssmitte=&xaxis=Aar&yaxis=Kon&show=&datatype=Laboratory&extendedfilters=False#HeaderText


感染患者の年齢層別、性別および地域別の分布

 図1は2016〜2017年のデンマークにおけるカンピロバクター感染の性別・年齢層別の罹患率である。カンピロバクター感染に典型的に見られることであるが、感染の被害は20代で多いことを除いてほぼすべての年齢層に概ね均等に分布している。2016年および2017年の年齢層別患者数がSSIの以下のWebページから入手可能である。2015年までと同様に男性患者の方がわずかに多く、全患者に占める割合は2016年が54%、2017年が53%であった。
https://www.ssi.dk/Smitteberedskab/Sygdomsovervaagning/Sygdomsdata.aspx?sygdomskode=CAMP&aar=2016|2016&kon=&aldersgruppe=&landsdelkode=&maaned=&udlandssmitte=&xaxis=Aldersgruppe&yaxis=Kon&show=Graph&datatype=Laboratory&extendedfilters=False#HeaderText (2016年)
https://www.ssi.dk/Smitteberedskab/Sygdomsovervaagning/Sygdomsdata.aspx?sygdomskode=CAMP&aar=2017|2017&kon=&aldersgruppe=&landsdelkode=&maaned=&udlandssmitte=&xaxis=Aldersgruppe&yaxis=Kon&show=Graph&datatype=Laboratory&extendedfilters=False#HeaderText (2017年)


図1:2016〜2017年のデンマークにおけるカンピロバクター感染の性別・年齢層(5歳階級)別の罹患率


 患者の居住行政区ごとのカンピロバクター感染罹患率を算出すると、デンマーク全域での均等な分布は見られず、人口10万人あたりの罹患率は0人(Christiansø)から202人(Bornholm)まで幅があった。2016年および2017年の行政区ごとの患者数は、SSIの以下のWebページから入手可能である。
https://www.ssi.dk/Smitteberedskab/Sygdomsovervaagning/Sygdomsdata.aspx?sygdomskode=CAMP&aar=2016|2017&kon=&aldersgruppe=&landsdelkode=&maaned=&udlandssmitte=&xaxis=Aar&yaxis=Kommunekode&show=Table&datatype=Laboratory#HeaderText


国外旅行

 2016年は計2,294人(49%)の患者について旅行に関する情報が得られ、このうち896人(39%)が国外感染として登録された。2017年は計2,335人(55%)について旅行に関する情報が得られ、このうち1,093人(47%)が国外感染として登録された。国外旅行関連の患者の割合は2015年までは35%前後であったことから、この割合が2017年に著しく上昇したことがわかる。

 最も多くの患者が感染した国はタイ(218人)で、続いてスペイン(207)、トルコ(155)、インドネシア(137)、インド(88)、ギリシャ(82)およびモロッコ(74)の順であった。国外感染患者のこの国別分布は、当然ながら、デンマーク人の渡航先分布を反映している。


疾患アウトブレイク

 カンピロバクター症のアウトブレイクは比較的まれである。デンマーク食品由来アウトブレイクデータベース(National Food Outbreak Database)には、 2016年および2017年にそれぞれ3件および2件のカンピロバクター感染アウトブレイクが登録されている。

 2016年6月、コペンハーゲン地域において、同一の食品提供業者を昼食に利用していた複数の企業の従業員の間でカンピロバクター感染アウトブレイクが発生した。患者は19社の計103人で、調査の結果、カモ肉と生鮮野菜の取り扱い時の交差汚染が原因であることがわかった。2016年の他の1件は、患者数は少なかったが、研究目的で一部の患者由来分離株が採取され全ゲノムシークエンシング(WGS)解析が実施された結果、アウトブレイクの発生が明らかになった興味深い事例であった。このアウトブレイクは2016年5〜6月に発生し、患者は全員がBornholm島で感染した8人であった。感染源は明確には特定されなかったが、カンピロバクターが検出されたことから2016年5月に市場から撤去されたイタリア産ルッコラとナポリターナサラダが有力視された。

 2017年6月には、Aarhus近郊の農場への見学の際に、牛舎から直接提供された生乳を喫飲した生徒245人のうち66人が発症した。コホート調査の結果は、生乳の喫飲がこのアウトブレイクの原因である可能性が極めて高いことを示した。

 2016〜2017年は、水由来カンピロバクター感染アウトブレイクの報告はなかった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部