デンマーク国立血清学研究所(SSI)からのカンピロバクター関連情報
http://www.ssi.dk


2016〜2017年のデンマークでのサルモネラ感染およびカンピロバクター感染
Salmonella and Campylobacter infections 2016-17
EPI-NEWS NO.15-2018
11 April 2018
https://www.ssi.dk/English/News/EPI-NEWS/2018/No%2015%20-%202018.aspx

(食品安全情報2018年13号(2018/06/20)収載)


 デンマーク国立血清学研究所(SSI)は現在、人獣共通胃腸感染症細菌として最も高頻度に検出されるカンピロバクター属菌および人獣共通感染性サルモネラ(Salmonella enterica)について、2年間ごとの疫学データをWebページに掲載している。細菌性胃腸病原体は、検査機関届け出システムを介してモニターされている。このシステムでは、6カ月以内に新規に陽性と診断された患者が国のサーベイランスデータベースである腸管感染症登録簿(Register of Enteric Infections)に登録される。サルモネラについては、届け出と並行して、SSIのリファレンス検査機関に分離株を提出しなければならない。デンマークでのサルモネラ感染およびカンピロバクター感染に関する前回のデータはEPI-NEWS 11/16(https://www.ssi.dk/English/News/EPI-NEWS/2016/No%2011%20-%202016.aspx)に掲載されている。


図1:サルモネラ感染およびカンピロバクター感染の届け出患者数(デンマーク、1980〜2017年)


 現在、カンピロバクター感染の年間患者数はサルモネラの約4倍となっている。図1は、1980〜2017年のデンマークにおけるカンピロバクター属菌および人獣共通感染性サルモネラ(S. enterica)の届け出患者数を示している。カンピロバクター症患者数はここ数年緩やかに増加しているが、サルモネラ症患者数は過去5年間ほぼ一定である。


カンピロバクター

 デンマークにおけるカンピロバクター感染の届け出患者数は2016年に増加したが2017年には減少し、この2年間の平均罹患率は人口10万人・年あたり77.8であった。患者数が2015、2016年の2年連続して増加し2016年は過去最高を記録したが、その後2017年に減少したことには注目すべきである。上述のEPI-NEWS 11/16にも示されているが、糞便試料の診断検査にPCR法が徐々に導入されていることが届け出患者数に影響している可能性がある。したがって、感染者数の減少を目的とした対策の有効性を評価するためにサーベイランスデータをそのまま使用するといった単純な話にはならない可能性がある。

 カンピロバクター感染は、デンマークでは引き続き最も高頻度で見られる胃腸感染症で、公衆衛生上の重要な問題の1つである。しかしながら、サルモネラとは対照的に、カンピロバクターはアウトブレイクの原因となることが少ない。2016〜2017年に登録されたカンピロバクターによる数少ない大規模アウトブレイクとして、感染源が家禽肉とみられる業務用厨房でのアウトブレイク、および、農場見学で生乳を喫飲した学童でのアウトブレイクが挙げられる。2件ともカンピロバクターによる典型的なアウトブレイクである。カンピロバクターは、他の西洋諸国およびデータが得られた多くの中・低所得国において細菌性胃腸感染症の主要な原因となっている。

 国外感染患者の割合は過去最高を記録し、2016年の38%から2017年は47%に上昇した。しかし、これらの値は届け出方法の変更によって影響を受ける可能性がある。


サルモネラ

 サルモネラ感染の2016〜2017年の平均罹患率は人口10万人・年あたり18.7であった。罹患率は過去7年間にわたりほぼ一定の低レベルの状態が続いている(図1)。デンマーク産の卵・鶏肉はサルモネラフリーの状態が維持されており、主に卵を介して伝播するサルモネラ血清型のS. Enteritidisにデンマーク人は一般的に国外で感染する。以前の年と同様、2016〜2017年のS. Enteritidis感染の4分の3以上が国外感染であった。

 従来から豚肉との関連が知られるS. Typhimuriumおよび単相性S. Typhimurium感染の届け出患者数もほぼ一定のレベルを保っているが、国外感染患者の割合は46%に上昇した。

 2016年および2017年のサルモネラアウトブレイク報告件数は、それぞれ11件および25件であった。2017年の件数が2016年より増加した主な原因は、2017年にSSIがすべてのサルモネラ分離株について全ゲノムシークエンシング(WGS)を通常検査に追加したことにある。WGS法によってサルモネラ分離株が厳密に分類され、相互の関連が明確に示される。その結果、より多くのアウトブレイクや小規模な患者クラスターが検出される。デンマークのサルモネラアウトブレイクは、主にS. Typhimuriumまたは単相性S. Typhimuriumが原因で発生している。2016〜2017年は、これらの血清型に関連して計14件のアウトブレイクが登録された。これら14件のうち6件について感染源が特定され、すべてが豚肉関連であった。2016〜2017年の最大規模のアウトブレイクは、2016年12月〜2017年4月に患者21人が報告された単相性S. Typhimuriumを原因とするアウトブレイクで、調理済みミートローフが感染源であった。2016〜2017年は計12件のS. Enteritidisアウトブレイクが登録され、このうち8件が国外旅行関連であった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部