デンマーク国立血清学研究所(SSI)からのカンピロバクター関連情報
http://www.ssi.dk


デンマーク抗微生物剤耐性モニタリングおよびリサーチプログラム(DANMAP)の2016年次報告書
DANMAP 2016
EPI-NEWS, No 44 - 2017
1 November 2017
https://www.ssi.dk/English/News/EPI-NEWS/2017/No%2044%20-%202017.aspx

(食品安全情報2018年5号(2018/02/28)収載)


 デンマーク抗微生物剤耐性モニタリングおよびリサーチプログラム(DANMAP:Danish Integrated Antimicrobial Resistance Monitoring and Research Programme)の年次報告書は、動物およびヒトにおける抗微生物剤の使用状況、およびこれらから採取される細菌の抗微生物剤耐性獲得状況の概要を示すものである。

 報告書は、生鮮肉製品から採取される細菌検体の抗微生物剤耐性についても記載している。2016年次報告書は、同年の最も重要な知見・結果に加えて過去10年間の動向についても詳細に報告している。DANMAP報告書は、デンマーク工科大学食品研究所(DTU Food)、同大学獣医学研究所(DTU Vet)およびデンマーク国立血清学研究所(SSI)の共同作業による成果である。DANMAP報告書は1995年以降毎年発行されており、デンマークにおける抗生物質耐性モニタリングの最も包括的なデータソースとなっている。本報告書はWebページ(https://www.danmap.org/)から入手可能である。ここでは、ヒトから採取される細菌での抗微生物剤耐性の状況について要点を紹介する。


抗微生物剤耐性:胃腸感染症関連

 2016年もそれまでの年と同様に、サルモネラ(Salmonella Typhimurium)ヒト分離株において、アンピシリン耐性、スルホンアミド耐性、およびテトラサイクリン耐性を示す株の占める割合は高レベル(65〜71%)であった。テトラサイクリンについては耐性レベルが徐々に上昇している。これら3種類の抗微生物剤への耐性は、S. Typhimurium分離株全体の64%を占める単相性株に関連している。国外旅行関連のS. Typhimurium分離株のシプロフロキサシンおよびコリスチン耐性率(それぞれ18%および5%)は、デンマーク国内感染のS. Typhimurium分離株の耐性率(各1%)より高かった。動物、食肉およびヒト由来のサルモネラ分離株で抗微生物剤耐性の検査が行われたものの中に、メロペネム耐性株は認められなかった。

 国外旅行関連の患者に由来するカンピロバクター(Campylobacter jejuni)のシプロフロキサシンおよびテトラサイクリン耐性率(それぞれ80%および59%)は、国内感染の患者に由来する分離株の耐性率(それぞれ33%および17%)より顕著に高かった。

 2016年は臨床検体のClostridium difficileモニタリングに関する予備調査が実施された。この調査の結果、二元毒素(binary toxin)を産生しない様々なタイプのC. difficileが、地域的また全国的に優勢であることがわかった。また、これらのタイプのC. difficileは二元毒素陽性株と同様の30日死亡率を示すことがわかった。したがって2017年は、それまで二元毒素陽性株に焦点を当てていたC. difficileのモニタリング方法を変更し、二元毒素陰性の検体もモニタリングの対象に含めることにした。この新しい方法により、C. difficileの既存および新興の両タイプおよびそれらの毒素や抗微生物剤耐性プロファイルについてモニタリングの強化が期待される。


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8 November 2017
https://www.ssi.dk/English/News/News/2017/2017%20-%2011%20-%20EPI-NEWS%2044%20DANMAP.aspx



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部