Morbidity and Mortality Weekly Report(CDC MMWR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.cdc.gov/mmwr/


主に食品を介して伝播する病原体による感染症の暫定罹患率と動向 - 食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)の米国内10カ所のサイトでのデータ(2006〜2017年)
Preliminary Incidence and Trends of Infections with Pathogens Transmitted Commonly Through Food - Foodborne Diseases Active Surveillance Network, 10 U.S. Sites, 2006-2017
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) Vol. 67, No. 11: 324-328
March 23, 2018
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/mm6711a3.htm?s_cid=mm6711a3_e

(食品安全情報2018年12号(2018/06/06)収載)


背景

 食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)は、カンピロバクター、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、リステリア、サルモネラ、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)、赤痢菌、ビブリオおよびエルシニアの検査機関確定症例を対象に、合わせて全米人口の約15%(2016年では推定4,900万人)をカバーする国内10カ所のサイトで住民ベースのアクティブサーベイランスを実施している。FoodNetは、米国疾病予防管理センター(US CDC)、10州の保健局、米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)、および米国食品医薬品局(US FDA)の協力事業である。

方法

 検査機関確定細菌感染は、臨床検体から培養によって細菌が分離されること、または培養非依存的診断検査(CIDT)によって細菌が検出されることと定義される。CIDTでは細菌性抗原や核酸配列が検出され、STECについては志賀毒素またはその遺伝子が検出される。「CIDT陽性のみ」の細菌感染は、培養による確認がないCIDT陽性結果を意味している。
 2006年以降に検査の手法が大幅に変更されているため、2017年と2006〜2008年の比較は培養により確認された患者数について行われ、2014〜2016年との比較は、培養による確認および「CIDT陽性のみ」を合わせた患者数について行われた。小児の下痢症後の溶血性尿毒症症候群(HUS)については、2016年の罹患率の2013〜2015年のデータとの比較が行われた。

結果:感染患者数、罹患率、動向

 2017年にFoodNetは、感染患者24,484人、入院患者5,677人および死亡者122人を確認した。人口10万人あたりの罹患率が最も高かった病原体はカンピロバクター(19.2)およびサルモネラ(16.0)で、次いで赤痢菌(4.3)、STEC(4.2)、クリプトスポリジウム(3.7)、エルシニア(1.0)、ビブリオ(0.7)、リステリア(0.3)、サイクロスポラ(0.3)の順であった(表1)。


表1:2017年の細菌・寄生虫感染の罹患率および2014〜2016年の平均と比較した時の変動%
(病原体別、FoodNet米国内10カ所のサイト、2014〜2017年†)

 †2017年は暫定データ
 *すべての血清群を含む
 §人口10万人あたり
 ¶変動には罹患率の上昇または低下がある


 検査機関確定患者において「CIDT陽性のみ」の患者(培養検査の結果が陰性の患者、および培養検査が実施されなかった患者からなる)が占める割合は、高い順に、エルシニア(51%)、カンピロバクター(36%)、赤痢菌(31%)、ビブリオ(29%)、STEC(27%)、サルモネラ(9%)、およびリステリア(1%)であった。2014〜2016年と比較して2017年に罹患率が有意に上昇した病原体(および変動%)は、サイクロスポラ(489%)、エルシニア(166%)、ビブリオ(54%)、STEC(28%)、リステリア(26%)およびカンピロバクター(10%)であった(表1)。2017年にCIDTにより陽性と診断された細菌感染患者は、2014〜2016年と比較して全体で96%(病原体別では34%〜700%)増加した。2017年はCIDT陽性検体の71%について追加培養(reflex culture)が試みられた。病原体別ではカンピロバクターの63%からリステリアの100%まで幅があった。追加培養が実施されたCIDT陽性検体のうちその結果が陽性であった検体の占める割合は、ビブリオの38%からサルモネラの90%までさまざまであった。

 2017年は、サルモネラ分離株のうち6,373株(89%)について血清型に関する詳細な情報が得られ、最も頻繁に見られた血清型は、Enteritidis(人口10万人あたりの罹患率が2.6)、Typhimurium(1.4)、Newport(1.3)、Javiana(1.1)、および単相性Typhimurium I 4,[5],12:i:-(0.9)の5種類であった(表2)。上位13位までの血清型のうち、Heidelbergの2017年の罹患率は2006〜2008年と比べ65%、2014〜2016年と比べ38%低下していた(表2)。Typhimuriumの罹患率も両期間と比べ有意な低下(それぞれ42%および14%)が見られた。一方、Javiana、Infantis、Thompsonの2017年の罹患率は2006〜2008年と比べ有意に上昇していた。


表2:2017年の上位13位までのサルモネラ血清型の罹患率および2006〜2008年、2014〜2016年の各平均値と比較した時の変動%(血清型別、FoodNet米国内10カ所のサイト、2006〜2017年)


 2017年にO157抗原の検査が行われたSTEC分離株1,473株のうち、413株(28%)がO157血清群と特定された。O157以外の血清群が特定されたSTEC分離株(non-O157 STEC)766株では、O26(29%)、O103(26%)、およびO111(18%)が最も多く見られた血清群であった。2017年は、non-O157 STEC感染の罹患率が2014〜2016年と比較して25%(95%信頼区間(CI)= 9%〜44%)有意に上昇したが、STEC O157感染の罹患率には変化が見られなかった。しかし、STEC O157感染の罹患率は、2006〜2008年と比較すると35%(95%CI = 21%〜46%)の有意な低下であった。

 FoodNet は2016年に小児のHUS患者57人(人口10万人あたりの罹患率は0.51)を特定し、このうち35人(61%)が5歳未満(人口10万人あたりの罹患率は1.18)であった。2016年の罹患率を2013〜2015年と比較すると、小児全体および5歳未満の双方において有意な差は見られなかった。2006〜2008年と比較すると、5歳未満の小児の2016年の罹患率は36%(95%CI = 8%〜55%)の有意な低下であった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部