(食品安全情報2018年20号(2018/09/26)収載)
公衆衛生および食品安全関連の検査機関では、全ゲノムシークエンシング(WGS)法の実施が徐々に普及しつつある。現時点では、国や分野により、検査機関のWGS法実施率、採用されているデータ分析法およびデータ解釈には大きなばらつきがある。
欧州連合(EU)および欧州自由貿易連合(EFTA)加盟各国の食品安全・獣医学検査機関におけるWGS解析の能力に関する情報を収集するため、欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)および欧州食品安全機関(EFSA)は、EUリファレンス検査機関(EURLs)の支援を受け、7つのEU/EFTAネットワーク(サルモネラ、リステリア(Listeria monocytogenes)、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)、カンピロバクター、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、抗菌剤耐性、二枚貝軟体動物の細菌・ウイルス汚染)のそれぞれを構成する各国検査機関を対象としたアンケート調査を立案した。質問項目は、WGS法の実施、対象の病原体、分析の目的、使用するデータ処理システムおよびツール、データの保存・分析の場所、WGS法を用いた研究プロジェクト、支援の必要性、およびWGS法の将来的な実施への関心などであった。
2016年末時点で、EU/EFTA 加盟30カ国中17カ国の検査機関でWGS法が使用されていた。具体的には、調査に参加したすべてのEURLsにおいて、また各国リファレンス検査機関(NRL)のほぼ半数(44%)および公的検査機関(OL)の一部(7%)においてWGS法が使用されていた。WGS法を実施しない主な理由は実施能力(予算、専門知識)の欠如であった。WGS法の使用目的は、主としてアウトブレイク調査およびサーベイランスで、分析対象の病原体は主にリステリア(L. monocytogenes)、大腸菌およびサルモネラであった。シークエンシング、配列データの保存および分析は、主に検査機関内で行われていた。様々な微生物および分析目的のために、いくつかの種類のデータ処理システム、シークエンサー、ソフトウェアが使用されていた。調査に参加した検査機関は、全体的に、EURLsおよび欧州域内のその他の機関との協力に前向きな意向を示した。本報告書は、欧州の食品安全検査機関におけるWGS法の使用に関して2016年末時点の詳細な状況を示したものである。
(関連ニュース記事)
食品安全における全ゲノムシークエンシング(WGS)の現状
Whole genome sequencing in food safety: the state of play
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/180629