欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
https://ecdc.europa.eu/en/home
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欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2016年)
The European Union summary report on trends and sources of zoonoses, zoonotic agents and food-borne outbreaks in 2016
EFSA Journal 2017;15(12):5077
Published: 12 December 2017
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.2903/j.efsa.2017.5077/epdf (EFSAサイト:報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5077 (EFSAサイト)
https://ecdc.europa.eu/sites/portal/files/documents/summary-report-zoonoses-foodborne-outbreaks-2016.pdf (ECDCサイト:報告書PDF)
https://ecdc.europa.eu/en/publications-data/european-union-summary-report-trends-and-sources-zoonoses-zoonotic-agents-and-9 (ECDCサイト)

(食品安全情報2018年6号(2018/03/14)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)による本報告書は、欧州の37カ国(欧州連合(EU)加盟28カ国および非加盟9カ国)で2016年に実施された人獣共通感染症モニタリングの結果を記載したものである。

 EU域内で最も多く報告された人獣共通感染症はカンピロバクター症であったが、2008年以降にみられる確定患者数の増加傾向は2012〜2016年においては顕著ではなかった。食品では、ブロイラー肉のカンピロバクター汚染率が依然として高かった。

 EU域内のサルモネラ症確定患者数は2008年以降減少傾向にあったが、2012〜2016年はその傾向が続かず、また2016年は、サルモネラ症全確定患者数に対するSalmonella Enteritidis患者数の割合が引き続き上昇した。ほとんどのEU加盟国は家禽類でのサルモネラ低減目標を達成したが、加盟5カ国は産卵鶏での低減目標を達成できなかった。一次生産段階では、繁殖鶏、ブロイラー、および繁殖・肥育七面鳥での対象サルモネラ血清型の群汚染率はEUレベルで前年までと比べ低下または横ばいであったが、産卵鶏のS. Enteritidis汚染率は有意に上昇した。食品では、家禽類のひき肉・肉製品でのサルモネラ基準違反はEUで低レベルであった。

 リステリアについては、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品でEUの安全基準を超えることがほとんどなかったにもかかわらず、リステリア症確定患者数は2016年にさらに増加した。

 エルシニア症確定患者数はEUで2008年以降減少傾向にあるが、2012〜2016年はその傾向が顕著ではなかった。また、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)感染確定患者数も2012〜2016年はほぼ横ばいであった。

 食品または水由来アウトブレイクは計4,786件が報告された。病因物質としてはサルモネラが最も多く、その他の細菌、細菌性毒素、およびウイルスがこれに続いた。アウトブレイク6件につき1件がS. Enteritidisによるものであった。病因物質/食品の組み合わせでは、サルモネラと卵の組み合わせが引き続き最も高リスクであった。

 本報告書には、ウシ結核、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ症、狂犬病、Q熱、ウエストナイル熱、および野兎病についても発生の動向と感染源の概要が記載されている。


2016年のEU域内の人獣共通感染症の概要

 13種類の人獣共通感染症の確定患者数のデータが図にまとめられている。2016年に報告された人獣共通感染症では、カンピロバクター症が全報告患者の約70%と最も多く、この傾向は2005年以降継続している。カンピロバクター症に続き、サルモネラ症、エルシニア症、STEC感染症などの細菌性疾患が高頻度に報告された。報告患者の入院率および転帰にもとづき疾患の重症度の分析が行われた(表)。このデータでは、リステリア症の入院率および致死率が最も高く、ウエストナイル熱がこれに続いた。入院に関する情報が得られた両疾患の確定患者のほぼ全員が入院していた。当該情報が得られた確定患者のうち、リステリア症患者の6人に1人およびウエストナイル熱患者の9人に1人がそれぞれ死亡した。


図:欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症の確定患者報告数および人口10万人あたりの報告率(2016年)

(各感染症の棒グラフ右端カッコ内の数値が確定患者報告数である。ウエストナイル熱のみ全患者報告数が示されている。)


表:人獣共通感染症確定患者の入院率および致死率(EU、2016年)

 a)ウエストナイル熱のデータは確定患者数ではなく全患者報告数。
 b)すべてのEU加盟国が表中のすべての人獣共通感染症の入院患者数、死亡者数について調査をしたわけではない。
 c)NAは当該の情報が収集されなかったことを示す。


(関連記事)

欧州連合(EU)域内のサルモネラ症患者数はもはや減少傾向にはない
Salmonella cases no longer falling in the EU
12 Dec 2017
https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/171212 (EFSAサイト)
https://ecdc.europa.eu/en/news-events/salmonella-cases-no-longer-falling-eu (ECDCサイト)



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部