米国疾病予防管理センター(US CDC)からのカンピロバクター関連情報
http://www.cdc.gov/


ペット店の子犬との接触に関連して複数州にわたり発生した多剤耐性カンピロバクター感染アウトブレイク(最終更新)
Multistate Outbreak of Multidrug-Resistant Campylobacter Infections Linked to Contact with Pet Store Puppies (Final Update)
January 30, 2018
https://www.cdc.gov/campylobacter/outbreaks/puppies-9-17/index.html

(食品安全情報2018年21号(2018/10/10)収載)


 米国疾病予防管理センター(US CDC)、複数州の保健当局、および米国農務省動植物衛生検査局(USDA APHIS)は、複数州にわたり発生した多剤耐性カンピロバクター感染アウトブレイクを調査した。疫学調査および検査機関での検査の結果から、ペット店チェーン「ペットランド(Petland)」の複数店舗で販売された子犬との接触が本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことが示された。本アウトブレイク調査は終了したが、子犬や成犬との接触によるカンピロバクター感染のリスクは十分認識されていない可能性があるため、今後も感染患者の発生が続くことがあり得る。

 本アウトブレイクに関連して、検査機関確定患者またはカンピロバクター症に合致する症状を呈した患者が2018年1月18日までに17州から計113人報告された(図)。患者の発症日は2016年1月12日〜2018年1月7日であった。患者の年齢範囲は1歳未満〜86歳、年齢中央値は27歳で、患者の63%が女性であった。情報が得られた患者103人のうち23人(22%)が入院したが、死亡者は報告されなかった。全ゲノムシークエンシング(WGS)解析の結果、患者由来のカンピロバクター分離株は遺伝学的に相互に近縁であることが示された。この遺伝学的近縁関係は、本アウトブレイク患者の感染源が共通である可能性が高いことを意味している。


図:ペット店の子犬に関連したカンピロバクター症患者(2018年1月18日までに報告された居住州別患者数、n=113)


 本アウトブレイク患者の臨床検体由来のカンピロバクター分離株は、広く推奨される第一選択の抗生物質に耐性であった。これは、カンピロバクター症の治療に通常処方される抗生物質では、本アウトブレイクにおける感染症の治療が困難である可能性があることを意味する。抗生物質耐性は、入院、血流感染または治療不成功のリスクの上昇に関連する可能性がある。WGS解析により、本アウトブレイク関連の患者38人および子犬10匹に由来する分離株の多くで、抗菌剤耐性に関連した複数の遺伝子および遺伝子変異が確認された。この結果は、本アウトブレイク関連の患者5人と子犬7匹に由来する分離株について、CDCの全米抗菌剤耐性モニタリングシステム(NARMS)の検査機関が実施した標準的な抗生物質感受性試験の結果と一致していた。これらの12株は、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ナリジクス酸、テリスロマイシンおよびテトラサイクリンに耐性であった。さらに、これら12株のうち、10株はゲンタマイシン、2株はフロルフェニコールにも耐性であった。

 患者に対し、発症前1週間の喫食歴および接触した動物に関する聞き取り調査が行われた。その結果、99%の患者が子犬との接触を報告し、87%がペットランドの子犬との接触またはペットランドの子犬との接触後に発症した人との接触を報告した。患者のうち25人がペットランドの従業員であった。

 アウトブレイク調査の期間中、検査機関において、ペットランドの子犬から採取された検体からカンピロバクターアウトブレイク株が分離された。WGS解析の結果、本アウトブレイク患者由来およびペットランドの子犬由来のカンピロバクター分離株が遺伝学的に相互に近縁であることが示され、患者がペットランドの子犬との接触により感染したことを裏付けるさらなるエビデンスとなった。

 患者が接触を報告した子犬は、犬種もペットランド店舗の所在地・州も様々であった。調査では、カンピロバクターアウトブレイク株に感染した子犬についてそれらに共通のブリーダーを特定することはできなかった。本アウトブレイクにおいて子犬は、流通チェーンのいずれかの段階、たとえばペットランドの各店舗への輸送時に、異なるブリーダーまたは配送業者由来の感染子犬との接触により感染した可能性がある。追跡調査の結果は、子犬でのカンピロバクター感染拡大の防止には、流通チェーン全般にわたる感染防止策の強化が必要であることを示している。

 今回の多剤耐性カンピロバクター感染アウトブレイクにより、ペットへの責任ある抗生物質使用の必要性が強調された。抗生物質耐性の出現および拡大の防止に役立てるため、子犬の流通チェーンの全段階において、カンピロバクター感染予防のための最良実施規範、下痢症を呈した子犬への対応、および責任ある抗生物質使用について教育が必要である。ペット所有者は、所有の由来に関係なく、子犬および成犬はヒト疾患の原因となり得るカンピロバクターなどの病原菌を保菌している可能性があることを認識すべきである。子犬・成犬に接触した場合またはそれらの糞便を処理した場合は、必ずただちに石鹸と水で十分に手指を洗うべきである。また、飼い犬の疾患を予防するため健康維持について獣医師に相談すべきである。ペット所有者のための子犬・成犬取扱い時の感染予防に関する詳細情報が下記Webページから入手可能である。
https://www.cdc.gov/campylobacter/outbreaks/puppies-9-17/index.html#petowners



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部