ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.bfr.bund.de/


小さな誤りが致命的結果に:キッチンの衛生管理が食堂やレストランだけでなく家庭でも重要な理由
Small errors, fatal consequences: Why kitchen hygiene is not only important in canteens and restaurants but also at home
26 January 2018
http://www.bfr.bund.de/cm/349/small-errors-fatal-consequences-why-kitchen-hygiene-is-not-only-important-in-canteens-and-restaurants-but-also-at-home.pdf

(食品安全情報2018年10号(2018/05/09)収載)


 ドイツで報告される食品由来病原体の感染患者数は、統計上、毎年100,000人を超えている。しかし、これらの報告患者は氷山の一角であり、実際の患者数は百万人を優に超えると推定されている。大多数の感染患者は食品が原因である可能性が高いため、感染の予防には、公共の食品提供施設、レストランおよび家庭における食品の適切な取扱いが非常に重要である。これは、自己限定的な下痢症などの症状が比較的軽い胃腸炎疾患に限った問題ではない。高リスク集団(小児、妊婦、高齢者、基礎疾患により免疫機能が低下している人)では特に、食品由来感染症が重症化して健康被害が長期化し、場合によっては死に至ることもある。このため、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)にとって、キッチンでの衛生管理の改善は極めて重要な問題である。

 食品由来感染の件数を着実に減らすためには、食品由来アウトブレイクに関連する食品およびその生産・加工に関する情報が必要である。このため、欧州連合(EU)加盟国は、食品由来アウトブレイクに関するデータを欧州食品安全機関(EFSA)に毎年提出している。欧州の2016年の人獣共通感染症および食品由来アウトブレイクに関するEFSAの報告書によると、強固なエビデンスのあるアウトブレイク521件について、原因食品を喫食した場所としては一般家庭が最も多く(205件)、次いでレストランなどの施設(133件)および公共の食品提供施設(幼稚園、学校、介護施設、病院の食堂など)(87件)であった。疾患アウトブレイクは、食品の不適切な取扱いにより発生しやすくなる。これらのアウトブレイクの調査によると、主要な原因食品は食肉・食肉製品(特に家禽肉)で(126件)、その他、複合食品・ビュッフェでの食事(85件)、卵・卵製品(72件)、魚・水産食品(70件)、乳・乳製品(45件)であった。野菜、果物、シリアル、発芽野菜、ハーブ・スパイス類とその製品が欧州のアウトブレイクの原因食品となった事例は計34件と少ないものの、決して無視はできない。

 欧州の強固なエビデンスのある食品由来疾患アウトブレイクの登録患者数は14,504人であるが、これはEUでの食品由来疾患の状況を部分的にしか反映していない。一例を挙げると、EU加盟国により報告された強固なエビデンスのある食品由来疾患アウトブレイクの主要な病因物質はサルモネラで、カンピロバクター、リステリア(Listeria monocytogenes)、およびその他の食品由来病原体によるアウトブレイクは少数派である。一方、2016年にドイツおよびEUの公衆衛生当局に報告された食品由来疾患の全患者数(それぞれ約100,000人、約360,000人)については状況が全く異なり、主要な病因物質はカンピロバクターであった(それぞれ約74,000人、約250,000人)。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部